この記事は2004年12月に掲載されたものです。
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演劇入門書に足りないもの

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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演劇やろうよ!
かめおか ゆみこ
青弓社 (2004.8)
通常24時間以内に発送します。

今年発行された演劇入門書に、かめおかゆみこ氏の『演劇やろうよ!』があります。演劇教育分野では著名な方で、ワークショップも多数開催されていますので、この本も人気が出るんじゃないかと思います。

スタッフワークのところでは、アマチュア向けの本にしてはめずらしく、制作者の役割や重要性もきちんと書かれています。その点では好感が持てるのですが、「芝居づくりにおける事務関係の仕事の統括責任者」とまとめられているのは、やはり残念です。かめおか氏ほどの方でも、制作=事務という認識なんでしょうか。

演劇というのは公演(=興行)と一体であり、公演をつくっていくことで制作者も表現の大きな役割を担っています。事務という言葉でくくられる内容ではないと私は思います。演劇は作品の完成と発表が同時に行なわれ、それがその瞬間消えてしまう「特殊な表現」です。作品が残る他の表現ジャンルとは全く異なります。この特殊性を強調し、演劇における公演の重要性と、だからこそ欠かせない制作者の役割をもっともっと力説すべきだと思います。

演劇入門書というと、演ずることの楽しさから入る本が多いようですが、「そんなことわかってるよ」と思いませんか。昔から「役者は3日やったらやめられない」ものなんですから。もし私が100ページの演劇入門書を執筆するとしたら、冒頭の30ページを費やして、「演劇の特殊性と消え行く表現であることの美学」「だからこそ重要な公演の一期一会」「アマチュアでも絶対に置くべきなのが制作者」と書きます。


演劇入門書に足りないもの」への1件のフィードバック

  1. with BACCHUS

    演劇入門書に足りないもの

    最近、「制作」という仕事が気になっている。高校演劇では、あまり「制作」という言葉を使わないようだ。高校生の芝居作りであっても、そう言った側面の仕事は必ずやられているのだが、別の言葉で呼ばれているようだ。だから、プロが使うところの「制作」という仕事をきち…

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