津あけぼの座の攻めの姿勢が目立つ。昨年11月に三重県文化会館と共同主催した、まちなか飲食店リーディング公演「M-PAD2011 おいしくてあたらしい料理と演劇のたのしみかた」が大盛況に終わったが、同じく11月に特定非営利活動法人パフォーミングアーツネットワークみえとして認証され、新たなスタートを切った。NPO法人代表理事には津あけぼの座支配人の油田晃氏が就任し、同時に肩書をプログラムディレクターに改めた。3月に津市中心部にオープンする、2館目の津あけぼの座スクエアの運営も行なっていく。
昨年からは劇場費無料の公募企画「ACT」(津あけぼの座チャレンジシアター)を実施。三重、京都、東京の3カンパニーを3週連続で上演し、今年も「ACT2」として開催する。地元の寺院、リトルプレスと2010年から続けているトークカフェ「ZENCAFE」も今月で18回目となった。
06年の開館以来続けている落語会も特筆される。落語は演劇より手軽に開催出来る上、演劇とは異なる客層が期待出来る。さらに演劇の公演期間中でも中割幕で装置を隠し、平日昼間に落語会を開催するなど、舞台を上手くシェアする形で劇場の共用が可能だと思う。他ジャンルを組み合わせて限られた空間を効率的に運用する工夫が、経営の厳しい民間劇場ではもっと必要ではないだろうか。シネコン全盛で上映機会が失われた単館ロードショー作品の上映会など、演劇以外に劇場を活かす方法はまだまだある。落語会は東京の王子小劇場でも力を入れているが、空き日が目立つ地域の民間劇場で、落語会や上映会がもっと行なわれてもいいのではないか。
肩書が「支配人」から「プログラムディレクター」に変わったことも、志の高さを感じさせる。貸館がほとんどの民間劇場で、演劇祭以外でプログラムディレクターを名乗るところはめずらしい。私の知る限り、現在は札幌・コンカリーニョの小室明子氏、京都・アトリエ劇研の田辺剛氏(表記はディレクター)ぐらいだ。民間劇場にとっては貸館が事業の根幹だが、それ以外にも出来ることは少なくない。さらに貸館自体も劇場側の恣意的な運用により、自主事業に匹敵する意味を持たせることも可能だ。プログラムディレクターの常設は、そうした「意思のある活動」「意思のある貸館」を明確に公言することで、非常に意味のある肩書ではないかと思う。
10年9月の毎日新聞のインタビューで、「将来の夢は、あけぼの座のNPO法人化」と語っていた油田氏。わずか1年でその夢を実現した。津あけぼの座は、これから小劇場を運営したいと考えている全国の演劇人のロールモデルだと思う。これからも、自然体で攻めの姿勢を続けていただきたい。