この記事は2010年12月に掲載されたものです。
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コアなファンが全員観るのは当然、その上を目指さないと話にならない

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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『BRUTUS』12月1日号特集「映画監督論」の覆面座談会で、長年アート系映画を手掛けてきた配給会社代表の方が、こう語っている。

そもそも東京都内には、本当のコアな映画ファンは、1万人いるかいないかだといわれているんです。

これに対してコアな演劇ファンの数を考えたとき、こまばアゴラ劇場の支援会員数が一つの目安になると思う。平田オリザ氏は劇評サイト「ワンダーランド」が2009年に行なったインタビューで、支援会員制度に基づくコアな観客数を400人ぐらいだと答えている。アゴラ界隈で上演されるアーティスティックな作品に足を運ぶ観客数として、体感的にもそれぐらいではないかと思う。

これを単純に比較すると、映画と演劇のコアな観客比率は25対1ということになる。現在のリアルな状況として、制作者が自覚しておくべき数字だと思う。数字が小さいということは、逆に言えば工夫次第でこれから伸びる余地があるということだ。小さなパイを奪い合うのではなく、マーケット全体を広げる働きかけをしてほしい。

この配給会社代表は、最近のヒット事例としてこんな数字を紹介している。

興行収入は1億円、宣伝費は2000万円以下という非常に素晴らしいケースですね。

この発言で注目すべき点は、宣伝費2,000万円が安い部類ということは、コアな映画ファン1万人のチケット代以上の宣伝費をかけても惜しくないということだ。つまり、コアな映画ファンが全員観るのは当然のことで、ふだん映画を観ない人をいかに取り込むかが勝負だということを意味している。コアな演劇ファンを奪い合って満足している小劇場界とは発想の次元が違うと思わないか。興行収入1億円を得るには、6万人に観てもらわないといけない。コアな映画ファンの6倍だ。演劇もコアなファンをクチコミの伝道師にして、その何倍もの人を劇場に連れてきてほしい。

BRUTUS (ブルータス) 2010年 12/1号 [雑誌]
マガジンハウス (2010-11-15)