この記事は2010年9月に掲載されたものです。
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演劇におけるフラッシュマーケティングの可能性

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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9月17日のリクルート「ポンパレード」エリア拡大に合わせてだと思うが、この数日間、テレビの情報番組が共同購入型(事前購入型)クーポンサイトの紹介だらけだった。通常は無料のクーポン券を事前に共同購入することで大幅な割引を提供するもので、制限時間と最低販売数が決められている。飲食店以外にも様々なサービス業が参加しており、東京ディズニーリゾートのシルク・ドゥ・ソレイユ『ZED』47%割引クーポンは300枚限定が完売している。

映画分野では、割引ではなくリバイバル上映を共同購入するサービス「ドリパス」がスタートしている。興行会社のチャレンジングな企画を一定の人数が購入した場合に成立するもので、まずは新宿バルト9で、土曜深夜のリバイバル上映が8月から始まっている。映画館の大スクリーンで観るのが目的なので、料金はむしろ高い場合もあるが、ファンにはたまらない企画だろう。上映希望作品はTwitterで募っているので、ニーズを反映した企画を立てられるのも特徴だ。

事前に観客が確保出来れば、興行会社はリスクなしで上映可能だ。演劇だと演劇鑑賞団体がこの形式に近いと思うが、こうしたネットのシステムを使えば、カンパニーや劇場が提案した上演企画を、観客が事前購入することでリスクなしの公演が可能になったり、再演の作品選定にも応用出来るだろう。もちろんすべての企画に使えるわけではなく、用途は充分検討する必要があるだろうが、興行のリスク軽減策として注目に値すると思う。

これらシステムの特徴は、事前にクレジットカードを登録しておき、購入が成立した場合のみ決済されることだ。最低販売数に達せず不成立になった場合は決済されない。この仕組みをカンパニー単独で構築するのは難しいが、既存の票券管理システムやプレイガイドにこの機能が実装されれば、ネット上で観客を集めてから公演決定する新しい興行スタイルが可能になる。

Twitterなどのソーシャルメディアと連携し、時間制限で商品提供する手法をフラッシュマーケティングと呼ぶが、興行チケットでは従来から先行予約などでこの考え方に慣れ親しんでおり、下地は充分出来ていると思う。演鑑ではなく、個人客のネット上のリクエストで旅公演が成立するような時代がいずれ来るのではないだろうか。