「パペット劇場ふらり旅 ~広島~」の「映画というものの何たる敷居の低さよ」は心に残りました。
演劇と映画の比較はよくされることですが、ほとんど映画館へ行かなかった方が具体的に映画の魅力を語ると説得力があります。劇場のイスが「拷問のようだ」というのはそのとおりだと思いますし、1日限りの公演が多い広島では予定と体調を合わせるのも大変だと思います。それでも「いい芝居だった」と思えるのは約3割というのは、本当に考えさせられます。この方の場合、劇評は選んで書かれているようなので、触れられていない作品が多数あるのでしょう。
この方が訴えたいのは、単にハリウッド的な作品の推奨ではなく、興行全体の環境についてだと思います。作品内容が万人受けするものでなくても、敷居を下げる方法はいろいろあるわけで、そのホスピタリティが演劇には欠けているということでしょう。「イッセー尾形のとまらない生活」の広島2日間公演にこんなに感激してもらえるのなら、各カンパニー・プロモーターは多少無理してでも2日やっていただきたいと思いました。
拷問イスに対しては、もうこれしかないでしょう。「舞台芸術のために国や自治体は民間劇場向けのイス設置奨励補助金を」。どこかの首長が最初に始めたら、日本の演劇史に永遠に名前が残るのに。