2月5日のTX「ワールドビジネスサテライト」が、オーケストラ経営を特集していました。クラシックブームを追い風に、ポピュラー音楽を取り入れたりカープとコラボレーションする広島交響楽団、日本初の株式会社オケとして2006年8月に設立されたフォンタナ・フィルハーモニー交響楽団(大阪市)を紹介。後者は助成金に頼らず、興行収入による運営を目指す事業計画を伝えていました。非常に刺激的な内容でした。
プレスリリースや番組によると、フォンタナは初年度120公演で売上高8億円、3年後は250公演で売上高25億円、経常利益1億円を目指すそうです。オケの経費は人件費が60%を占めるので、著名な指揮者は起用せずに音楽そのもので観客を呼び、広告なども積極的に打つそうです。代表取締役はクラシック愛好家の経営コンサルタントの方で、大阪・東京で行なわれた「特別内覧演奏会&会社説明会」では自ら指揮台に立ちました(もちろん今後は立たないそうです)。
演劇の場合、ステージ数を増やすには限界がありますので単純な比較は出来ませんが、慣例を打ち破って新しいビジネスモデルを追及する姿勢には心を揺さぶられました。NHK交響楽団の演奏収入が06年度は約13億円なので、途方もない数字にも思えますが、不可能を可能にしてほしいものです。
オーケストラ経営については、NHK「クローズアップ現代」1月17日の「オーケストラを救えるか~深刻な財政危機~」も扱っていました。ゲストの堺屋太一氏曰く、助成がないと成り立たない構造自体が間違いで、プロスポーツを見習えとのことでした。個人による寄付税制拡充も訴えていました。番組では、積極的なアウトリーチやコミュニケーション活動で動員を図った札幌交響楽団を紹介。4年間で3万人増やしたそうです。
演劇とクラシックの課題はとても似ています。どちらも劇場、コンサートホールへ出掛ける文化が根付いていないからです。小劇場とは異なる部分もありますが、フォンタナ東京支所スタッフの方が個人ブログ「えぬぶろぐ」で書かれている「需要と供給のバランスが悪い」「小さいマーケットを巡り、お客様を奪い合う」は、まさにいまの私たちの姿ではないでしょうか。
助成金は演劇にも不可欠な存在ですが、現状はあまりにも振り回され、制度そのものがおかしいと感じます。自分たちで観客を創造していく重要性を、オケの挑戦は改めて教えてくれます。