この記事は2004年2月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



魅力あるカンパニーのサイトとは

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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公演時期以外のサイト更新に苦しんでいるカンパニーが少なくないと思いますが、そんな制作者にアドバイスしてみたいと思います。

昨年12月に発表された「@niftyホームページグランプリ2003」。@nifty会員以外も対象にした個人サイトのコンテストですが、この特別賞を受賞したのが「世界一周デート」。今年1月にはマイクロソフト主催の「WindowsXPのある生活コンテスト」(モバイルとWindowsXP部門)でも大賞を取りました。

愛読者の方もいると思いますが、2002年6月22日に結婚したカップルが、そのまま二人とも寿退社。7月5日からバックパッカーとして世界一周旅行に旅立ち、旅先からノートパソコンで更新している旅行記です(あと21日で帰国予定)。お二人とも前職が雑誌編集者だけあって、旅先で作成しているとは思えない見事なサイトです。いまや世界中からインターネット出来る時代。類似のサイトはいくつかありますが、ここがピカイチじゃないかと思います。

私は、旅と演劇は似ていると思います。特に小劇場系カンパニーが旗揚げして暗中模索で日々を歩んでいく姿は、旅そのものではないでしょうか。たとえ公演がない時期でも、そこにはきっと新しい発見があるはずです。

演劇という消えてしまう表現を選んだ私たちにとって、この瞬間を生きているというメッセージを発信し続けることが、自分たちの存在証明であり、表現行為であり、観客と共に歩むということではないかと思います。インターネットはそれが可能なメディアであり、まさに演劇のためにあるようなものです。この可能性を活かしきっていないカンパニーが多いのは、とても残念なことです。

観客は公演のときだけ存在しているのではありません。毎日の生活で、カンパニーと同じ世界を伴走しているのです。この意味を理解したサイト運営をすれば、公演前の案内DMをはるかに凌ぐ成果があると私は思います。

もう一つご紹介したいのが、大阪市の特別養護老人ホーム愛港園。ここは施設長の廣田憲司氏を始めとするスタッフの皆さんが、ウェブログを書かれています。以前は日記サイトを使われていたのですが、昨年12月からlivedoor Blogに移行されました(過去分も遡って移植)。

このサイトの素晴らしいところは、普通はパンフレット程度でしか知ることの出来ない福祉施設の日々が、すべて情報公開されていることです。議事録事故報告を専用のlivedoor Blogに掲載(もちろん入所者名はイニシャル)、行事予定はYahoo!カレンダーを使われています。恐らく日本で最も情報公開されている老人ホームだと思いますし、ウェブログの活用という面からも特筆されるべき事例だと思います。

当然ながら、プライバシーの配慮や施設サイトに個人日記を載せることへの議論はあったそうです。廣田氏はご自身のウェブログでこう書かれています。

できていないことをありのまま伝えることで現在の施設の限界を伝えたかったし、そのことに対する意見をもらえれば施設が成長していくきっかけになると考えたのである。
ぼくたちが病院に行くとき、もちろん技術も問題にするけれども、あそこのお医者さんは優しいとか、看護婦さんは親切だというのも判断基準である。そういう視線の獲得をスタッフ紹介の中でおこなっていきたいと思う。

この精神は、カンパニーのサイトにも通じるところがあるのではないでしょうか。演劇という、本番当日まで未完成の作品を選ばなければならない観客にとって、そのカンパニーがどんな気持ちで創作活動に当たっているかを知ることは、大きな情報源になると思います。

きちんと評価を受けようという姿勢も共感出来ます。いまのカンパニーのサイトの多くは閉ざされすぎていませんか。掲示板に書かれるのはファンの応援コメントだけ、たまの辛口コメントは無視という状況になっていませんか。掲示板で作品に対する応酬なくして、そのカンパニーはどうやって芸術面で成長するのでしょう。「作品がすべてなので敢えて掲示板にはコメントしない」というポリシーの主宰者も少なくないようですが、だったら最初から掲示板を設けず、アンケートフォームだけにしたらいいと思います。

愛港園の近くには、シアター座・ウェーヴが運営する「海岸通りの小さな劇場」があるため、ウェブログにもたびたび登場します。廣田氏は小劇場が大好きだとか。映画も点数付きで多数評価されていて、読み応えがあります。


魅力あるカンパニーのサイトとは」への3件のフィードバック

  1. ogamaya

    こんにちは、先日の宣伝美術ワークショップでお世話になりました、アルマジロ遊戯団の小川と申します。
    ワークショップでも少しお話させていただいたのですが、
    公演時期でないときのWEBのあり方、というのが悩みどころでもあり、情報をどこまで公開したらいいのか、というのも悩むところです・・・。制作者・演出家と相談をし、オープンにする情報とそうでない情報を選別して行きたいと思っています。
    一度公演をみた事がある顧客には、また公演へ行きたくなるようなWEBを。公演をまだ観たことが無い方には、WEBで興味を持って、実際の公演へ足を運んでいただくようにできれば、というのが目標です。

  2. オガワシンサク

    「世界一周デート」の記事をみて「ぉ」っと思ってしまった。
    私がよく通っている下北のダーツバーのお客さんの後輩らしいです。
    同じ25歳、ここまで思い切って旅ができるといいなぁと思いつつ、こつこつと仕事をしてしまう自分・・・

    本文の内容とちがってごめんなさいw

  3. hirota

     福祉とは全く関係のない分野の方に当施設のホームページ活動を大変高く評価して頂きましてありがとうございます。福祉施設のレベルとしては紹介して頂けるほどのこともありませんので恥ずかしいかぎりですが、利用者のみなさん、ご家族のみなさん、そして関心を持って頂ける一般のみなさん方と共に努力したいと思います。
     それにしてもブログっておもしろいですね。トラックバックされることで初めてみなさんのサイトを見ることができました。「すごいなあ」の一言です。これからも時々見させて頂きます。

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