この記事は2012年2月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



他地域のカンパニーの関西公演の増加について

カテゴリー: とある制作の観測的ブログ | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 間屋口克 です。

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この頃、関西で公演をされる他地域(主に東京)のカンパニーが増えてきたという話を、何度か耳にする機会がありました。
自分の観劇を振り返ってみても、ここのところ他地域のアーティストの作品を関西で観る機会が多かったように思います。
そこで、実際に増えているかどうかを数年前と比較してみました。

■2008年に関西で公演した他地域のカンパニー 15団体
(AFRO13、新国立劇場製作作品(屋上庭園/動員挿話:主催は兵庫県立芸術文化センター)、満塁鳥王一座、二兎社、三角フラスコ、東京デスロック、キャラメルボックス、クロムモリブデン、青年団、劇団ジャブジャブサーキット、劇団千年王國、モダンスイマーズ、飛ぶ劇場、七味まゆ味 一人芝居、燐光群)

■2009年に関西で公演した他地域のカンパニー 13団体
(金魚(鈴木ユキオ)、劇団鹿殺し、国道五十八号戦線、柿喰う客、少年王者舘、クロムモリブデン、劇団ジャブジャブサーキット、黒テント、青年団、劇団どくんご、燐光群、青年団、三角フラスコ、チェルフィッチュ)

■2012年2月に関西で公演した他地域のカンパニー 6団体
(カムヰヤッセン、世田谷シルク、劇団うりんこ、プロペラ犬、劇団鹿殺し、右近健一一人芝居)

※下記を参照させていただきました。目でざっと追っただけですので、抜けなどがあればご容赦ください。
 また、実際には年間複数回公演している団体もありますので、2008・2009年とも公演数では15~20公演ぐらいです。(同一公演の関西内での複数地域での公演をどう数えるかなどで変動します。)
2008年 http://kansai.engeki.client.jp/archives2008.html
2009年 http://kansai.engeki.client.jp/archives2009.html
2012年2月 http://www.dfgosaka.com/

ちょっと数え方がややこしいので入れていませんが、今月はさらに日韓演劇フェスティバルや、Art Theater dBで「KOBE-Asia Contemporary Dance Festival」がありました(「KOBE-Asia Contemporary Dance Festival」は25日まで)。

もちろん、今月はかなり集中している月だとは思いますが、それでも、一か月でかつての通年の半分ぐらいの数の公演があるわけですから、数年前に比べて関西外のアーティストの作品が格段に数多く見れるようになっていることは間違いないかと思います。

他地域の劇団の関西公演が増加している理由については、
・KYOTO EXPERIMENTのfringe企画などで若い劇団が来るきっかけが作られている
・相内さん(in→dependent theatre)、植村さん(衛星)、杉原さん(KUNIO)のような熱心なプロデューサーがネットワークを築いていかれている
・劇場法などの議論の中で新しい創作環境の可能性として、地域が注目されている
・「ままごと」「イキウメ」「柿喰う客」などが、ここ数年の間に関西で大きな支持を得るようになっている
など、いろんな理由が考えられますし、それらが複合した結果であると思います。
逆に、来られているカンパニーに「関西で公演をされる理由」を聞いてみたいです。

最近の傾向については、上記のリストを見比べていても「若いカンパニーが自主企画で公演を行う」というモデルが増えているのは確かかと思います。
これはKYOTO EXPERIMENTや京都芸術センターがある京都や、AI・HALLやKAVCがある兵庫に比べて、精華小劇場が閉館し、芸術創造館の支援事業もどうなるか不透明な大阪にとっては、希望が持てる傾向であると思います。
(京都や兵庫にしても、恵まれた予算規模というよりは、やり繰りしながら…という状況だと思いますので、このような流れを上手く後押しできればいいということについては同じような想いかと思われます)

残念ながら、大阪の今の状況では他地域からの公演が増えていても、それを後押しするような行政の支援は望むことは難しいです。
しかし、2009年頃、「東京のカンパニーの関西公演が減少している」と言われていた時期に、東京のプロデューサーの方にその原因をお聞きした時に、「観客が入らないのが一番大きいですね。OMSがあるころは、OMSが800人は保障してくれるという安心感があり、関西での公演を決断しやすかった」と言われました(うろ覚えのため、細部に間違いがあればご容赦ください)。

特に、ここで挙げた「若いカンパニー」は東京などの地元の公演でも、まだまだ伸びていく段階であり、まずは地元公演を成功さえなければならず、なかなか地方公演には広報などの手が十分に回らないという状況が多いかと思います。

そこで、まとまった金額の支援は難しいですが、「一人一人がなるべく公演を見に行き」、「面白かった作品を周囲に広める」ことが出来れば、現在、増加している他地域からの関西公演を増やし続けることはできると思います。
それは、最終的には関西と他地域のネットワークの強化や魅力的な作品の増加に繋がり、「関西の劇団の成長」や「観客数の増加」といったことに還元されると思います。
逆に、「関西で公演をしても人が入らない」という印象がついてしまえば、支援を受けにくい若いカンパニーの公演はすぐに減少してしまうと思います。

わかりきった当たり前の事を書いており、「何をいまさら」と思われる方も多いと思いますが、「世田谷シルク」や「劇団うりんこ」の公演で、「観客席を見るとやや空きがあった」という話を聞いたり見たりして、今日から「カムヰヤッセン」の公演なので、「多くの観客の方に観てもらえるといいな」という私情が強いと思いながらこの記事を書きました。

お断りしておきますと、私は「世田谷シルク」も「劇団うりんこ」も特に関係もありませんので、正確な動員数は知りません。また、「カムヰヤッセン」の作品の内容や売れ行きなども知りません。
ただ、東京などの他地域で活躍し始めた若いカンパニーの関西公演が増えていると思ったので、関西の演劇に関係されている方が、なるべくそのような公演を見に行かれて、面白ければ評価が広まるようになれば、さらに他地域からの公演は増えるだろうと思っています。そして、それは上記のように関西の舞台芸術を発展させることに繋がると考えているので、そのような一助になればと思って書きました。

宣伝のようになってしまって申し訳ないですが、関西の方が一本でも多くの興味を持った他地域のカンパニーの公演に足を運ぶきっかけになれば幸いです。また、他地域のカンパニーの方も、こんなおせっかいを焼く私以上に情の厚い方が関西にはたくさんおられますので、ぜひ興味を持たれたら関西に来ていただければ幸いです!