「王子小劇場ブログ」でも書かれていますが、岐阜県の可児市文化創造センター前館長の桑谷哲男氏のエッセイ「館長は語る」は必読の内容です。[ナレッジ]の「制作者の見識を深める関連コンテンツへのリンク集」にも追加しました。館長が変わったからといってすぐ削除されることはないとは思いますが、早めに全編目を通してください。劇場の必要性を語る下りは、平田オリザ氏の「芸術の公共性」論に勝るとも劣らないんじゃないかな。
「指定管理者制度と公立劇場」の4項・5項で書かれている「指定管理者制度ではなぜ館長(及芸術監)について議論されないのか」「指定管理者が交代したら財団スタッフはなぜ解雇されなければならないのか」は、目から鱗の内容です。指定管理者の公募プロポーザルと言えば、外郭団体の運営財団と民間の対立を思い浮かべがちですが、桑谷氏はトップや主要ポスト(館長、芸術監督)だけを公募して、スタッフはそのままでいいじゃないかと提言しています。
確かに、その館を熟知しているスタッフを総入れ替えするのは逆に非効率で、新たに指定管理者になるたびに職員を揃えるのは大変な労力です。指定管理者制度をうまく使い、館長や芸術監督こそ若手のアーティストを招くべきという画期的提言です。シンポジウム「回転扉の向こう側」では、次のように語っています。
私の知る限りでも、優れた公共ホール(桑谷氏は「公立劇場」と呼べとの説ですが)ほど、民間の制作者を積極的にスタッフに迎え入れています。優れた人材はそこへ集まり、他の劇場とますます差がついていくわけです。正職員でなくてもいいから、全国の運営財団はもっと門戸を開き、地元の才能を登用すべきです。これは制作者の貴重な収入源にもなります。
桑谷氏の提言を受け入れる自治体があるのなら、die pratzeオーナーの真壁茂夫氏のような人材こそ、公共ホールの館長や芸術監督に迎えるべきではないでしょうか。新たに民間劇場をつくることに確信が持てない時代なら、公共ホールに民間の才能を注ぎ、トップダウンで体質を変えていってほしいものです。