この記事は2007年5月に掲載されたものです。
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制作者のためのブックガイド

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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fringeでは「制作者のためのブックガイド」を新設しました。これまでご紹介してきた新刊や購入可能なオススメ本に加え、Amazonマーケットプレイスで購入可能な絶版本も掲載しています。随時更新します。

もちろんここから本を買ってほしいという気持ちもありますが、それ以前に制作者としてこれらの本に目を通しておいてほしいのです。読者の中には、fringeを無償で情報が入手出来る便利なサイトと思っている方もいるかも知れませんが、私は『現代演劇のフィールドワーク―芸術生産の文化社会学』に書かれていることをfringeに書こうとは思いません。むしろ、『現代演劇のフィールドワーク』を読んでいる前提で話を進めます。制作者なら必読の書ですし、自分にきちんと投資する人が報われるようなサイトでありたいと思っています。値段はやや張りますが、それだけの価値があります。この本を読んだ制作者たちが質問掲示板で議論する――そんなサイトが理想だと思っています。

品切れや絶版でもAmazonマーケットプレイスから買える可能性があるものとして、『舞台芸術と法律ハンドブック―公演実務Q&A』『TOKYO芝居探検隊―小劇場ハンドブック』もぜひ注目してください。『舞台芸術と法律ハンドブック』発行時の[トピック]はこちら。芸団協にも再版を期待します。

『TOKYO芝居探検隊』はテキスト中心の地味な印象ですが、「初日通信」編集部と錚々たる演劇ライターが制作しただけあって、現在でも類書の追随を許さない構成と濃さを誇っています。230ページ中88ページを占める第2章が演劇の創作過程を詳細に描き、現在と異なる部分を少し手直しすれば、そのまま制作者のバイブルになるでしょう。

例えば「制作」の項では、制作者の行動を「本多劇場公演チケット前売り開始の前夜」「マチネのあるスズナリ公演の一日」などの切り口でドキュメントタッチで紹介。「ちらし」では、進行スケジュールから外部スタッフとの交渉方法までを具体的に紹介。「客入れ」では、立ち見170名を入れた人気公演千秋楽の45分間のドキュメントを、当日客の視点から圧巻のリポート。「打ち上げ」も5ページを割いて詳述し、細川展裕プロデューサーの「制作は打ち上げが終わるまで仕事」という名言もこの本から広まったと思います。「劇団の経済学」では、公演予算300万円規模の収支例を掲載しています。

5月1日現在、Amazonマーケットプレイスを見ると117円~840円で11点もありますよ。