この記事は2006年7月に掲載されたものです。
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私ならレビューサイトをこうする(2)

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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その2:芸術面と制作面を別々に評価・採点出来るシステムにする

これはすでに採り入れているレビューもありますが、評価・採点する場合は作品の芸術面とは別に、制作面を独立させた欄を設けるべきだと思います。「えんげきのぺーじ」などで、「受付が悪かったので★マイナス1個」のような記述を見かけることがありますが、芸術面と制作面を一緒に総合評価してしまうと、せっかくの指摘が薄まってしまうように私は感じます。つくり手にはっきり自覚させるためにも、「芸術面:★★★★、制作面:無星」と表示したほうがよいのではないかと思います。

舞台芸術は創作と興行が同時進行する特徴を持っています。媒体に記録されて流通する他の表現とは全く異なるわけで、制作面の重要性は言うまでもありません。飲食店のガイドブックに料理とは別にサービス・接客の項目があるように、演劇でも制作面はそれ単独できちんと評価されるべきだと思います。フロントスタッフの対応や料金・チケットに関することはもちろん、例えば見切れ席に座らされて見えないシーンがあった場合などは、制作者の責任ですから遠慮なく「制作面:無星」にすべきだと思います。

カンパニーの中には、作品自体はレベルが高いのに、受付が非常に弱いところもあります。こうした団体は芸術面と制作面の評価が乖離するはずですので、それを明確に示すことでつくり手へのメッセージになるでしょう。制作面が弱すぎるのなら、それは外注してでも強化しなければならないことですし、突き詰めれば公演を主催すべきかどうかを考えなければならないでしょう。主催をしない創作団体に徹する道もあると思います。作品を創作することと公演を主催することは別です。容易に公演が打てることは小劇場の強みでもありますが、それが本当に公演になっているかは観客の厳しい評価にさらされるべきでしょう。

逆に芸術面の評価が平凡なのに、質の高いホスピタリティで観客をもてなす団体もあると思います。それは優秀な制作者がいる証拠だと思いますので、他団体は引き抜いたらいいと思います。制作者の仕事は外部から見えにくく、技術スタッフのように観客から評価される機会もありません。せめてその一端が垣間見えるものとして、制作面の採点が使われるといいなと感じます。

制作者は黒衣なので制作面が目立つ公演はどうなのか、(たとえよい印象でも)制作面が記憶に残るような公演は失敗ではないかというご意見があることも承知しています。しかし、演劇界はいままであまりにサービス業としての自覚がなさすぎたと思います。桟敷に観客を詰め込めばよいという時代は終わりました。どんなに料理の腕がよくても、接客のひどい店に人は集まらないでしょう。逆に、普通の味でもその空間に身を置くことで癒されることはあるかも知れない。演劇も同じだと思います。

    「私ならレビューサイトをこうする」全5回

  1. 私ならレビューサイトをこうする(1)
  2. 私ならレビューサイトをこうする(2)(本記事)
  3. 私ならレビューサイトをこうする(3)
  4. 私ならレビューサイトをこうする(4)
  5. 私ならレビューサイトをこうする(5)