この記事は2005年8月に掲載されたものです。
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高校演劇の不思議4

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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もう不思議は解消しているのですが、あとから検索しやすいよう、便宜上このタイトルで通させていただきます。

こちらの議論をご覧いただいた畑澤聖悟氏から入場整理券をお送りいただき、第16回全国高等学校総合文化祭(高総文祭)優秀校東京公演の2日目を観ました。1日目の山口県立華陵高等学校『報道センター123』も興味深かったのですが、都合が合いませんでした。華陵高校って、演劇部ではなく舞台芸術部なんですね。日本舞踊部が改名したからだそうですが、カッコイイです。

国立劇場大劇場での優秀校公演は、高総文祭の演劇日本音楽郷土芸能の3部門上位4校が出演します(日本音楽は最優秀の天理高等学校第二部が不参加)。入場整理券とは別に来場順に「ナンバーカード」を発行し、その番号順に入場するシステムです。例年は楽勝で入場出来るようですが、今年は1日目が大混雑したようで、2日目は1300番からキャンセル待ち(場内の様子を見ながら徐々に入場)になりました。大劇場の定員は花道設置時で1,520名ですから、関係者席などを除いてこの数にしたのでしょう。

私は開演時刻の13時に着いたのですが、ナンバーカードは1517番。「相当お待ちいただきます」と言われ、プログラム3本が終わった15時すぎに入ることが出来ました。この日は優勝校以外に、東京のチアリーダー部4校による演技や都立昭和高校学校の演劇特別公演が前半にあり、それ目当ての観客が途中で帰ったために席が出来たようです。読書で時間を潰しましたが、一時は本当に入れないかと思いました。もっと遅い方は16時まで待たされたようです。

全国から出演者を集めて毎年公演を開催する全国高等学校文化連盟(高文連)、そして実際に運営に当たる都高文連の苦労は察するに余りありますが、それでもこの入場方法やプログラムの組み方は改善の余地があると思います。日本芸術文化振興会は、入場無料でないと会場協力してくれないのでしょうか。甲子園だって外野は無料ですが、内野は有料で前売りです。国立劇場も1階を有料(2・3階は無料)にして部門ごとに前売券を出せば、本当に観たい人が確実に観られるようになるのではないでしょうか。さらに率直な感想として、日本音楽、郷土芸能に国立劇場大劇場はぴったりですが、演劇には舞台が広すぎると思います。コンクールは大劇場で仕方ない面もありますが、エキシビションである東京公演は、演劇本来の広さで演らせてやりたい。出来れば新国立劇場小劇場で、各校3ステージずつは演らせてやりたい。新国立劇場が出来たのですから、演劇部門の会場は新国立に移すのが自然だと私は思うのですが。

ムチャなことを書いていると思われるかも知れませんが、さすが全国の優秀校だけあって、レベルは非常に高いです。有料で公演規模を拡大しても充分やっていけると思いますし、日本芸術文化振興会も独立行政法人になったのですから、この魅力的なコンテンツを売り出すくらいの発想があるべきだと思います。この催しの中心にいる方々は、ぜひ改革をしていただきたいと思います。

15時すぎに入った私は、日本音楽1校、郷土芸能2校、演劇2校(香川県立高松工芸高等学校青森県立青森中央高等学校)を観ました。個人的に今回収穫だったのは、日本音楽や郷土芸能です。予備知識を持たずに訪れた私にとって、高校の筝曲部や郷土芸能部がこれほど活発に活動していること自体が感動でした。熊本県立牛深高等学校郷土芸能部「牛深ハイヤ節」の軽快な踊りには鳥肌が立ちましたし、大阪府立芥川高等学校の女子だけの和太鼓部も壮観でした。丸一日経ったいまでも、私の頭の中では「牛深ハイヤ節」が鳴り響いています。牛深高等学校だけで数千円払ってもよいと思いました。NHKは「青春舞台」だけでなく、これらも放送してほしいものです。

演劇は両校とも優秀校らしい力作で、青森中央高等学校『修学旅行』は戯曲・演出・役者の三拍子揃ったエンタテインメントでした。東京の小劇場で普通に上演しても、充分成立するのではないでしょうか。笑いの中に戦争の影を潜ませる戯曲、たわいない会話から不確かな明日を連想させるエンディングの演出などは、畑澤氏だからこそ実現したものだと思いますので、「畑澤氏で最優秀賞なのは当たり前」と書いた私の感想は変わりません。これは批判ではなく、生徒創作で畑澤氏の上を行くほうが無理でしょう。プロがアマチュアに手を抜くのが逆に失礼な場合があるように、これからも思い切りプロの実力を高校演劇界に見せつけていってほしいと思います。それが結果的に全体の向上につながると思います。

次の作品までのセッティング時間に「幕間インタビュー」というのがあり、放送部(桐朋女子高等学校)のMCが緞帳前で出演者に質問するコーナーがありました。『修学旅行』は登場人物の数名が漫画研究部という設定で、そこでしゃべるネタは著作権の関係で相当気を遣ったそうです(具体的なことは畑澤氏のウェブログ「渡辺源四郎商店店主日記」参照)。本来は当て書きなのに卒業した先輩の役を演じる苦労や、戯曲が最初は数枚ずつしか渡されないなど、小劇場の現場を彷彿させる答えもあり、とても微笑ましかったです。もちろん生徒たちは畑澤先生を気遣って、たいへん無難な言い方をされていました。

今回のパンフレットを見て気づいたのですが、日本音楽部門は顧問以外に外部の指導者が明記されています。郷土芸能部門も、当然ながら地元の伝承者の指導を受けています。演劇部も外部の演劇人の指導を堂々と受ければいいし、指導者として公表すればいい。あるいは畑澤氏のように教諭が演劇人であってもいいし、教諭が演劇活動をしていることを胸を張って言える社会になってほしい(特に近畿地区!)。地域でその先駆けを行く畑澤氏が、高校演劇界へメッセージを送ることを期待します。畑澤氏のような恵まれた環境がレアケースなのではなく、やろうと思えば演劇活動と他の職業が両立可能な社会になってほしいと私は願っています。

最後に素朴な疑問ですが、待てば入れたように、客席は首都圏中の演劇部で埋まっているという感じではありませんでした。宿題で忙しいのか、テレビでいいと思っているのか、解せません。優秀校をナマで観ておくことが、創作の大きなモチベーションになると思うのですが……。私が顧問なら、生徒の首に縄を掛けてでも連れていきます。

(参考)
高校演劇の不思議
続・高校演劇の不思議
続々・高校演劇の不思議


高校演劇の不思議4」への5件のフィードバック

  1. 山手城南地区情報・ひら

    私も昨日国立劇場で観劇しました。
    他の用事の関係で15:30頃到着しました。入れそうもなければ諦めようと考えていましたが、案に相違して10分程度の待ち時間で入場できました。整理番号は1500番台でした。郷土芸能終了時には観客がかなり帰り、演劇公演時には空席があり、ナンバーカード無しで入場できる状態だったのは意外なことでした。

    演劇公演の間に日本音楽や郷土芸能をはさむプログラムは、演劇の観客数が多いことを前提とした組み方だと考えられますが、演劇の客だけでは席を埋められなくなってきたのかもしれません。高校演劇関係者でも整理券の入手や当日の順番待ちはかなり面倒ですし、それ以前に公演や整理券の入手法の情報が不足しています。

    さて、「修学旅行」は、どのような種類のお客さんをも満足させる期待通りの作品でしたが、何よりも凄いと思ったのは、エピソードに小さな嘘がまるでないことと、学校の持つ気恥ずかしさを笑い飛ばせる客観的な目線です。今回の優秀校四校は珍しく全校を舞台にした芝居でした。高校生が作る学園ドラマはリアルかというとそうではなくて、むしろ学園ものテレビドラマを大量に見て育っている高校生の作る学園ドラマは、意外に嘘くさいのが多いものです。別に芝居なんだから大嘘ついてもよいと思うのですが、学校に長年身を置く立場としては、小さい嘘ほど気になって芝居に集中できないのです。実際、今回の他校の作品の中には、それはあり得ないだろうと気になって仕方がないシーンもありました。

    「修学旅行」はプロだから書ける芝居であるだけでなく、学校現場で正面から格闘している人だからこそ書ける芝居、しかも、学校の中に引きこもるのではなく、学校の外にしっかり開かれた目線を持った人の作品であると感じました。

  2. 荻野達也

    畑澤氏の場合、教諭がプロの劇作家になっていったわけですから、教諭という職業の裏打ちがあってこその作品ですね。現場の方々が絶賛されるのがよくわかります。

    私は高校演劇だからといって特別なフィルターをかけて観ることはせず、普通の演劇として観ています(もちろん上演時間や舞台美術の制約は考慮しますが)。リアルな高校生を演じさせたら、現役の高校生以上にリアルな役者はいないはず。その意味で登場人物が成人ばかりの既成戯曲を演るのはもったいないし、審査員の受けも決してよくないでしょう。コンクールがなんでもありだとしても、この辺の選択は重要だろうと感じます。もちろん、ひらさんが指摘されている「リアルを描くことの難しさ」はありますが、それが成功した場合の感動は何物にも代え難いものがあります。ぜひ、いましか表現出来ない世界に高校演劇関係者は挑んでほしいと思います。

    『修学旅行』は高校演劇という枠ではなく、演劇という枠で語るべき作品になっていたと評価します。

  3. 某日観劇録

    高校演劇は面白かったらしい

    紹介だけしておいて結局行かなかった高校演劇@国立劇場ですけど、fringeのブログで荻野さんがべた褒めしています。だけど入場が混雑していたのは事前予想通りという

  4. テーマ別コラム

    ブログ紹介

     昨日のブログでも触れた「修学旅行」の作者、畑澤聖悟さんが、ブログを書いている。国立劇場での優秀校公演に参加する青森中央の様子などが書かれていて興味深い。
     「渡辺源四郎商店店主日記」
     http://nabegen4ro.exblog.jp/
     また、「高校演劇の不思議」と題し…

  5. 荻野達也

    このアーティクルをご覧になった優秀校東京公演スタッフの方から、長文の情報提供をいただきました。非公開を希望されていますので詳細は伏せますが、現状を変えるのは非常に難しいようです。

    書かれている理由は内部事情を踏まえた説得力あるものですが、優秀校東京公演が今年16回目ということは、平成になってから始まったわけですよね。江戸時代から続く伝統行事ではないのですから、本気で変えようと思えば変えられないものはないと思います。

    日本芸術文化振興会が独立行政法人になったいまがチャンスだと私は思います。同じく独立行政法人となった国立博物館、国立美術館の積極的な事業展開が参考になると思います。

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