芸術文化振興基金・芸術創造活動特別推進事業の締切(11月19日消印有効)が迫り、制作者はいま申請書作成の佳境を迎えていると思う。
平成23年度芸術創造活動特別推進事業は、予算要求が通れば「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)への移行が予定されており、公演本番にかかる費目が支援対象外になる代わりに、公演以前の芸術創造活動は黒字であっても支援される予定だ。詳細が募集案内では不明瞭だが、11月1日に発行された日本演出者協会機関誌『ディー』5号のインタビューで平田オリザ氏はこう答えている。
この発言から、公演以前の芸術創造活動については「自己負担金の範囲内」という制限が撤廃されるのは明らかだが、現在の3分の1以内が変更されるのか、具体的になにが公演本番に該当するのか、移行後の助成対象経費一覧表が欲しかった。概算要求の段階でこれ以上の情報は出せないのだろうが、宣伝費・印刷費のように解釈次第でどちらにも入る費目もある。大きな制度変更だけに、現場の制作者にとってシミュレーションしたい気持ちが強いだろう。
さらに制作者が気をもんでいるのが、ツアーとの兼ね合いだ。助成金を申請する大きな理由として、費用がかさむツアーを支援してもらいたいという思いがある。しかし、旅費・運搬費は普通に考えれば公演本番にかかる費目だ。そうなると、ツアー規模が大きいほど「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)に申請すべきか迷うだろう。非常に重要な部分だけに、この辺の情報がもう少し開示されればと思う。
もちろん赤字助成からの脱却は画期的だし、財務省を説得するために助成対象経費を公演以前に限定するのは理解出来る。そのことに異論はないが、ツアーという要望に「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)が応えられる仕組みになっているかが、いま最も気になるところだ。
もし旅費・運搬費が対象外なら、平成21年度で終了してしまった「舞台芸術の魅力発見事業」を復活出来ないか。巡演を促進するために旅費・運搬費を専門にした助成で、非常に意義があったと思う。個人的には、これまで文化庁が創設した助成制度でいちばん理にかなっていると思えた。