小劇場演劇(以下、小劇場)とは、小さな劇場でやる演劇という意味ではありません。観客だけでなく、最近は若い演劇人の中にも誤解している人がいるようなので、おさらいしておきたいと思います。
小劇場は、そもそも俳優中心に結成された新劇に対し、演出家中心に組織されたものを指します。当然ながら演出家の個性が色濃く反映する集団となり、初期はアングラとも呼ばれました。劇場の大小ではなく、組織が小さいことが重要だったのです。
組織としての定義に加え、私は興行スタイルも小劇場の大きな特徴だと考えます。団体客に依存する商業演劇、演劇鑑賞団体と不可分の新劇と異なり、小劇場は個人客をベースにした手打ちが基本です。ツアーではプロモーターの手を借りることもありますが、やはり個人客が相手です。映画館へ個人で行くように、演劇も個人で楽しむライフスタイルを体現したものが小劇場だと私は思っています。だから私は小劇場が好きなのです。
この2点が崩れない限り、どんな大きな劇場で上演しようとも小劇場です。若い演劇人と話すと、小劇場という言葉が観客にマイナーなイメージを与えるとして、演劇と言い換えることが増えているようですが、私は小劇場という言葉に込められた思いを大切にしたいし、制作者として個人客対象の興行スタイルは小劇場の勘所だと思っています。
私も小劇場と新劇のジャンル分けに疑問を感じ、全部演劇でいいじゃないかと思ったことがありました。表現内容ではもはや差がありませんし、小劇場と新劇の人的交流も盛んです。しかし、組織と興行の面ではやはり歴然とした違いがあるし、観客の側にも意識の違いがあります。その部分への違和感を、自分が小劇場を好きになった背景として大切にしたいと思うようになりました。特に演出家と制作者は、この点をよく考えてほしいと思います。
fringeは、その名のとおり小劇場という言葉をこれからも使い続けていきます。