6月30日発行の日本劇団協議会機関誌『join』53号ロングインタビュー「THEATRE NOW」は、鈴木裕美氏(自転車キンクリーツカンパニー)でした(聞き手は演劇評論家の長谷部浩氏)。その中で小劇場系に演出専業が少ないことについて、
やっぱり自作の演出しかしない人は演出家じゃないとは思っているんですよね。ものをつくる人、演劇をつくる人としてとても優れていると思うし、すごいなと思うんだけど、自作しかやんない人は演出家じゃないんだよなぁ……。
と語っています。「じゃあ野田秀樹は、演出家ではない?」という長谷部氏の問いに、
うーん、ある意味では。野田さんの才能、それを否定する意味じゃ、まったくないですけど、演出家ではない……と思います。
と答えています。演出家の資質について鈴木氏は「他者との関係性を探検する人」とし、長谷部氏も「自分が書いた戯曲を、初演のときに再解釈し直すことは矛盾しています」と賛同しています。
戯曲と演出を分けて考えるのは難しいことで、野田氏の場合など特にそうかも知れませんが、「自作の演出しかしない人」は狭義の演出家としての条件を満たしていないことになると思います。
私も一連の発言に同感です。演出家とはなにかを考えたとき、やはり小劇場系も自作以外の演出を手掛けてほしいし、反対に自作の演出を他者に委ねるケースがもっと増えてもいいと感じます。