年末のシアターコクーンで、NODA・MAP『走れメルス』を観ました。夢の遊眠社時代の初期代表作を小劇場系の役者たちがどう演じるのか、現在につながるアレンジはあるのか、期待して足を運びました。1986年以来の7演目、遊眠社を知らない若い観客にもぜひ接してほしい作品です。
86年の6演目は、遊眠社設立10周年記念企画「あなたが選ぶ夢の遊眠社ベストプレイ」という観客投票(応募総数51,449票)で2位(5,433票)に輝いたリクエスト上演でした。1位はダントツで『小指の思い出』(8,919票)でした。
舞台と映像を重ねる演出が随所に見られますが、これは『エレファント・バニッシュ』の影響でしょうか。野田秀樹氏はロンドン留学中、サイモン・マクバーニー氏のワークショップに影響を受けてNODA・MAPを始めたわけで、感覚の連鎖を感じました。
出演者では小松和重氏が素晴らしい。怒涛の台詞量を見事な滑舌と発声で伝え、場の空気をよどませる瞬間がない様は目を見張ります。その溶け込み方には天性のセンスを感じます。遊眠社時代の段田安則氏に匹敵する存在感で、いつかこのクラスの作品で小松氏主演があってもいいのではないかと思いました。雰囲気は全く異なりますが、小松氏に興味を持たれた方は、ぜひサモ・アリナンズにも足を運んでいただきたいと思います。豪華キャストによる座組みですが、知名度と実力が比例していないと思える役者も散見される中、小松氏は本当に光っていました。
かつて演劇界では、「遊眠社しか観ない観客がいる」と言われたものです。遊眠社だけは大挙して押し掛けるのに、他の公演は見向きもしない観客が多数いる実態を表わした言葉ですが、NODA・MAPは遊眠社のようなカンパニーではなく、小劇場系の役者をワークショップで幅広く起用しています。NODA・MAPの作品世界に興味を持つことは、小劇場系に興味を持つことにつながるはずです。NODA・MAPの観客が出演者の所属カンパニーも訪れるよう、願ってやみません。『エレファント・バニッシュ』再演で空席が目立つような残念な事態も招かぬよう、NODA・MAPの観客たちが「もっと好奇心を持つよう」希望します。
NODA・MAPはカーテンコール前から客電をつけます。つまり、カーテンコールしたくない観客は帰ってもいいということです。これは他カンパニーも見習うべきでしょう。
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