この記事は2005年9月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



KAKUTAはなぜ8ステしかしない

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

KAKUTAは、なぜ『北極星から十七つ先』を8ステしか設定しなかったのでしょう。

前回公演『南国プールの熱い砂』は、青山円形劇場の8ブロック中6ブロックを使用して7ステでした。舞台美術などで多少増減はあると思いますが、1ブロック定員47名ですから1ステ282名、合計1,974名となります。今回のシアタートラムは基本的なエンドステージでしたので、定員225名~248名と思われ、8ステで合計1,800名~1,984名になります。

キャパシティだけ見ると現状維持で問題ないように思えますが、『北極星から十七つ先』はダブルキャスト公演(ベガサイド/デネブサイド)でした。15名のキャストが総入れ替えとなる総勢31名(30名+両サイドとも出演1名)の上演ですから、両サイドに足を運ぶ観客も少なくないと思います(6,400円が5,800円になるセット券も販売していました)。もちろん、キャスト31名による手売り効果もあるでしょう。そうなると、8ステあるけれど実質4ステと考えていいのではないでしょうか。当然ながら前売完売で、当日券は立ち見状態でした。

ダブルキャスト公演にするなら、ステージ数をもっと設定すべきですし、この日程しか押さえていなかったのなら、なぜここでダブルキャスト公演を企画したのか、理解に苦しみます。主宰者と制作者の意見交換はきちんとなされたのでしょうか。『南国プールの熱い砂』は評価が高く、トラム進出を機にKAKUTAを観てみようという初見の方もいたと思います。長めの日程にすれば新たな観客を獲得出来たはずで、非常にもったいないと感じます。

青山円形、トラムともなれば、公演の1年半~2年前に劇場と交渉していたはずですが、その時点で2年後の自分たちのあるべき姿をイメージし、それに向けた劇場確保をしなければなりません。Aoyama First Actで中劇場進出を果たした次のトラム、そこで再演をダブルキャストとなれば、必要なステージ数はおのずと見えてくるはずです。

KAKUTAに苦言を呈するのは、彼らに実力があり、可能性があるからです。どうでもいいカンパニーには、わざわざこんなことは書きません。地道に成長することは大切ですが、演劇制作には勇気を持って挑戦しなければならないときもあります。そのことを言いたくて、このアーティクルを書きました。

私自身は9月17日ソワレ(ベガサイド)を当日券で観ました。「休むに似たり。」と同じ印象を持ちました。筆者のかわひら氏は初演をご覧になっているだけに的確な分析だと思いますが、初演を知らない私には悪い部分が増幅して見えました。明石スタジオならこれで通用すると思いますが、トラムの空間を支配するには、全体を貫く明確なライン(それはエピソードでも演出上の工夫でもいいのですが)が必要だったと感じます。

舞台美術については、「ほぼ観劇日記」のご指摘もありますが、私はこんなことを上演中考えていました。ダブルキャスト公演なのに8ステしかないということは、なにかダブルキャストにしなければならない必然性があるはず。それは、舞台の転換要員として人手が必要だったのではないか。このパネル中心の装置はラストシーンで屋台崩しになって、物語のキーワードである流星群を、トラムのタッパを最大限に活かした特殊効果で見せてくれるのではないか……。本気で期待しました。屋台崩しのためのダブルキャスト公演だったら、もちろん大納得だったのですが。