劇場法(仮称)に関する議論は、専門職員の配置やアーツカウンシルの在り方に収斂してきた感があるが、ここで原点に立ち返って劇場を巡る法律について考えたい。ハードとしての劇場を規定する法律は建築基準法、消防法、興行場法などがあるが、かつて平田オリザ氏は根拠法のない劇場についてこのように書き、自分たちでなにも決められない劇場を嘆いていた。
作成者別アーカイブ: 荻野達也
劇場法(仮称)推進派はこのインタビューを読むべきだ
劇評サイト「ワンダーランド」のインタビュー記事「芸術創造環境はいま―小劇場の現場から」第3回の上田美佐子氏(シアターΧプロデューサー兼芸術監督)が素晴らしい。拙速な劇場法(仮称)制定に警鐘を鳴らしている上田氏のまとまった考えが読める。
これを読んで、一人一人が改めて劇場法(仮称)について考えてほしい。推進派から考えを変える方もいるのではないか。それくらい心に響く内容だ。
山本忠氏と日活JOE氏が一日限りの俳優復活

神戸・六甲山に登る六甲ケーブル「六甲山頂駅」天覧台内に、六甲ヒルトップギャラリーという施設がある。ここで神戸ゆかりの登山家・加藤文太郎の企画展が10月22日~11月17日に開かれているが、その関連イベントとして昨年の第16回OMS戯曲賞大賞を受賞した故・大竹野正典氏の遺作『山の声』のリーディング公演が11月13日にある。水難事故で昨夏急逝した大竹野氏が、加藤文太郎とパートナーの遭難を描いた二人芝居だ。加藤文太郎は新田次郎著『孤高の人』のモデルとして知られる著名な登山家だ。
これに出演するのが、2001年10月の遊気舎以来9年ぶりの俳優復活となる山本忠氏と、同じく1998年1月のファントマ客演以来ほぼ13年ぶりではないかと思われる日活JOE氏だ。二人は90年代前半にこれっきりハイテンションシアター(現・ファントマ)で活躍。山本氏は94年に遊気舎『交響詩・大森良雄』に客演し、その演技に惚れ込んだ後藤ひろひと氏が三顧の礼で96年に遊気舎へ迎えた名優だ。『ダブリンの鐘突きカビ人間』など、山本氏がいなければ誕生しなかっただろう作品も多い。JOE氏もこれっきりハイテンションシアターで数々の主役を務め、そこから自身のユニット・日活浪漫劇場を主宰した。
『シアターアーツ』44号は精華小劇場の現状にフォーカス――DIVEとLLPアートサポートは未来を共に考えていくべき時期
第3次刊行となった『シアターアーツ』(発行/AICT日本センター、発売/晩成書房)の2号目となる通巻44号が9月に出た。これまでの『シアターアーツ』は演劇専門誌というより学術誌と呼ぶべき内容で、よほどの評論好きしか手に取らないと思っていたが、第3次からは創造環境を巡る時事的・制作的な話題も多く、これまでに比べて近寄りやすくなった。私は演劇評論というものは作品だけを対象にするのではなく、創造環境全体を含めて対象にしないと同時代に語る意味がないと考えているので、今回の編集方針は評価したい。
第3次では毎号時事的な論考に加え、地域からの情報発信にもページを割いている。43号の論考は劇場法と支援制度の見直し、そして柴山麻妃氏(劇評誌『NTR』編集長)が福岡の90年代以降の歩みを概観している。『シアターアーツ』読者層を想定した鋭い分析が読めるので、福岡の演劇人はぜひ目を通すべきだろう。福岡の抱える課題をここまで端的に指摘した文章を、私は読んだことがない。
『ポスターを貼って生きてきた。 就職せず何も考えない作戦で人に馬鹿にされても平気で生きていく論』
ポスターハリスカンパニー代表取締役の笹目浩之(さすがわささめ)氏がパルコ出版から半生記を上梓する。「普通の就職をするのではなく、芸術の周辺で仕事をしたいと思っている人必読の一冊」とのこと。これは読まねば。装丁は同じ1963年生まれの東學氏(188)。
パルコ
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朝日新聞特集「文化変調 芸術とカネずさん」は助成制度の本質を見ていない
朝日新聞東京本社版10月16日付朝刊の「文化変調 芸術とカネずさん」という特集記事はちょっとひどい。
国からの文化助成金・補助金に不正が相次ぎ、制度そのものが見直しを迫られているという趣旨で、舞台芸術と発掘調査の分野でそれぞれ具体的事例を挙げている。これ自体は間違いではないが、見出しや記事のトーンから現在の助成制度すべてが悪いように感じられ、これを読んだ一般読者の多くが「不況なのに芸術文化への助成なんて必要なのか」と思うはずだ。見出しがすごいので、ぜひ実際の紙面(3面)を見ていただきたい(ブログ「WIND MESSAGE」が画像をアップしている)。
演劇制作会社 国の助成金欲しさに出演料水増し
助成制度「無法地帯のよう」
アーティストの評価は誰がやるべきか――平田オリザ氏のポスドク起用案に反対する
日本でも国のアーツカウンシル試行的導入が平成23年度文化庁概算要求に計上されたが、全国のアーティストを誰が評価するかについて、平田オリザ氏はポスドクで調査組織をつくり、夜行バスで全国を回らせることを主張している。10月18日に開催された世田谷パブリックシアター特別シンポジウム「劇場法を“法律”として検証する」でも同じ趣旨のことを述べており、持論は変わっていないようだ。
関西小劇場界の提携公演・協力公演を改めて考え直す
東京と関西の劇場の違いを考えるとき、キーワードとなるのが「提携公演」だろう。東京の演劇人には理解しにくいシステムだと思うし、関西で30代前半までの演劇人は最初から提携公演がある環境で活動してきたので、その功罪が客観的に見えづらいだろう。改めて提携公演とはなにか、今後どうあるべきなのかを考えたい。
関西の提携公演は、上本町にあった近鉄小劇場(04年閉館)が東京の小劇場系カンパニーを招聘する際、現地制作がいない彼らをサポートするために生まれた制度と聞いている。劇場スタッフが票券管理、宣伝、宿泊手配、当日運営などを代行し、チラシは他劇場に折り込み(挟み込み)を依頼した。本来、関西方式の折り込みは指定日時にチラシを持ち寄り、全員の共同作業でチラシ束を組むが、旅公演の場合は遠方からのカンパニーを支援するため、関西の演劇人たちが代行した。対象は旅公演に限られていたわけで、相互扶助の精神に支えられた行為だった。提携公演と言うと劇場使用料割引をイメージする人が多いと思うが、実際には劇場側がリスクを負いながら票券管理を行ない、その収入で費用を賄っていたもので、共催に近い内容だ。現在の提携公演とはかなり違うことを知ってほしい。
『劇場空間への誘い――ドラマチック・シアターの楽しみ』
日本建築学会建築計画委員会文化施設小委員会が企画編集した『劇場空間への誘い――ドラマチック・シアターの楽しみ』(鹿島出版会)が、10月に発行された。2002年に発行された『音楽空間への誘い――コンサートホールの楽しみ』(同)の続編に当たるもので、建築書ではあるが演劇関係者や文化政策研究者の寄稿・インタビュー、全国のケーススタディや取材リポートが掲載されている。
最新刊ということでゼロ年代の公共ホールが事例の中心になっており、その意味では1999年に発行された清水裕之氏(名古屋大学教授)の『21世紀の地域劇場――パブリックシアターの理念、空間、組織、運営への提案』(同)の意思を継ぐ本と言っていいだろう。清水氏自身も本書に寄稿しており、今後の公共ホールの課題として、市民参加の在り方とアーティストとの連携の2点を挙げている。
