この記事は2009年6月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



「むりやり堺筋演劇祭」について

カテゴリー: とある制作の観測的ブログ | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 間屋口克 です。

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気がつくと1本目の記事を書いてから半年が経過していました。
半年の間に、fringeもリニューアルされ、いろんな制作者の方に会うたびに「ブログ止まってますね」と言われました。
さすがに心苦しくなってきたことと、話題を見つけたので更新します。

現在、大阪の公立・民間を合わせて9つの小劇場が集まって、「むりやり堺筋演劇祭」という企画を行っています。
詳細はfringeの記事特設サイトを見ていただければ幸いです。

この企画には、いろんな形で関わらせていただいているので、客観視が難しい面もあるのですが、大阪の小劇場の「良い面」と「悪い面」が良く表れていると思ったので記事にしてみました。

まずは、この演劇祭を要素にわけて見てみます。

<(演劇祭を行う)理由>
小さな政府=民営化・効率化を目指す人達は、このモノサシ(実利第一のモノサシ)で財源確保の為、効率の悪い公立施設の統廃合、売却を進めている。私はこの動きに対して小劇場の当事者のひとりとして社会にアピールするためのある試案を考えた。

<(演劇祭を行う)目的>
知られていない、見えにくい存在としての小劇場とその公演を、当事者の力で市民社会に向けて「小劇場ここにあり!」と主張し、その多彩な世界をより多くの方達に味わっていただく為の小劇場有志による新たな試みである。

<手段>
9つの劇場が5月末~10月初旬の 期間「お勧めプログラム」を持ち寄った。
(「お勧めプログラム」の公演を)5回観たら1回無料招待というサービス

(上記全て「企画にあたって」より)

まず、<目的>には大いに賛同します。「小劇場の活動をより多くの人に発信していく」というのは、小劇場の活性化にとって正しい方向だと思います。

また、近年の大阪の小劇場が「縮小・停滞傾向にある」という暗黙の同意が多くの人にあるのだと思いますが、この目的を実現するために、公立・民間を問わず9劇場が集まって行動に移すという点も、「良い事のためには苦労をいとわない」人がたくさんいる素晴らしいことだと思います。

一方、個人的には<理由><手段>については疑問を感じています。

まずは、<理由>から考えられる近年の大阪市、大阪府の文化行政の軽視からスタートしたのであれば、達成される<目的>は有効な面もあるとは思いますが、若干ピントを広げすぎな気がします。
そして「大阪の小劇場の活性化」という<目的>寄りのところから企画が考えられたなら、「大阪の小劇場の停滞」の真因を行政の施策に求めるのも、ちょっと極

端すぎる気がします。

「21世紀に入って、大阪の小劇場界はとかく「沈滞している」「元気がない」という枕詞から語られる」という言葉から企画の趣旨が語られているので、事象がありきで企画が始まったのだと推測しますが、それならばもう少しその原因を明確化した方がいいかと思います。

そこがぼんやりしている分、具体的な<手段>が真因にアプローチできていない気がします。
<手段>は真因を解決するために、対象や効果を設定する必要がありますが、真因が明確になっていないため、「小劇場に親しんでいるユーザーへのサービス」と見えやすい対象の声を反映しているように思います。

また、上記に比べて些末な問題ですが、大阪で活動している演劇人からは以下のような疑問も聞かれたりします。
・「堺筋演劇祭」なのに沿線でない劇場が入っていたり、沿線から近い「一心寺シアター倶楽」や「ロクソドンタブラック」が入っていない
・各劇場ごとに「お勧めプログラム」の数の差がありすぎるが、少ない劇場はそれだけ見るものがないのか

何らかの試みをすると批判の声が出るのは常だと思いますが、直感的に不思議に思うことには説明を用意しておいたほうがいい気はいたします。

特にあまり多くの<手段>を用意していない企画の場合は、ある意思を持った運動体としての側面が強くなりますので、「なぜこの劇場か」「なぜこの公演か」は簡単でも記載があるほうがいいかなと思います。

こんなことを書いてしまって、いろんなところから怒られる気もしますが、個人的に大阪のいい面は「行動が早い、協力的」、悪い面は「準備が足りない、検証がされない」だと思っています。
「巧遅より拙速」といいますが、大阪人は”いらち”なので効果が出ないとすぐに意識が別の方向に行く面があります。

個人的には<目的>はぜひ達成したいことなので、今後の検証、改良、発展の一助になればと、気になった面を書きました。