この記事は2006年3月に掲載されたものです。
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フロントスタッフの想像力

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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渡辺源四郎商店開店公演『夜の行進』東京公演を2月19日に観ました。

まず紹介しておきたいのが、フロントスタッフが着けていた揃いの前掛け。「制服道場!」というオンラインショップで、シルクスクリーン印刷したようです。思ったより安く、版を1年保存してくれるのがいいですね。男女で長さが違うのも洒落ています。

弘前劇場『ケンちゃんの贈りもの』で知られる宮越昭司氏(79歳、青森・劇団雪の会)が客演していますが、この回は同年輩の観客が連れ立って来場され、お知り合いではないかと想像しました。普段のアゴラとは違った雰囲気で、それ自体はとても好ましかったのですが、お一方が私の隣に座られ、開演後にカバンをガソゴサさせているのに嫌な予感がしました。あー、やっぱり。冒頭の宮越氏登場シーンで早速カメラを構えています。

老人の楽しみを奪うのも忍びないので、サイレントな銀塩カメラなら目をつぶろうとも思いましたが、機械音のする大きな液晶画面のデジカメでしたので、心を鬼にして注意させていただきました。これは隣に座った者の務めだと思います。ストロボは焚かないとのことでしたが、眩しい液晶画面を振りかざされるのは、やはり支障があります。

劇場慣れしていない団体客の方というのは、ロビーですぐわかります。フロントスタッフは当然気づいていたと思います。もしかしたら上演中に写真を撮りたいのではないかという想像力を働かせ、撮影はご遠慮いただくこと、写真が必要なら記録用に撮ったものから提供することなどを、ロビーにいるうちに伝えておけなかったのかと思います。

私も、制作した公演で写真撮影されたことが何度かあります。初期には俳優の親戚にストロボを焚かれました。一般客なら不可抗力ですが、事前に手の打ちようがあった身内客の行為だけに、非常に後悔しました。それ以来、俳優には写真撮影しそうな身内客への注意を来場前に依頼し(舞台写真が必要ならプロが撮ったものをお分けするので、客席では撮らないで)、ロビーでも団体客の動向に注意を払うようになりました。フロントスタッフに想像力があれば、今回の件も予防可能だったと思います。

終演後のポストパフォーマンストークは、作・演出の畑澤聖悟氏、次回公演に客演する山内健司氏(青年団)、それに渡辺源四郎商店東京支店長の工藤千夏氏(青年団演出部)が参加。普通なら畑澤氏と山内氏の対談形式になるところを、工藤氏が聞き手として入り、非常にアットホームな雰囲気で進行しました。これほどくつろいだポストパフォーマンストークは、めずらしいと思います。対談より鼎談、2人より3人はいいアイデアだと思いました。