今年観逃した公演で最も心残りなのは、2月の劇団そとばこまち『丈夫な教室』です。大阪公演のみで予定が合わなかったのですが、昨年5月の初演*1 からわずか9か月での再演は、大阪教育大学附属池田小学校の事件をモチーフにしたという話題性だけでなく、作品としての完成度を感じさせます。日程後半はクチコミで観客が増えたようで、精華小劇場オープニング企画*2 ならロングランに挑戦してもよかったのではないかと思います。チラシ画像は「1/365」*3 が大きめに載せています。
この作品が二度と得難いものであると思われるのは、作・演出の小原延之氏がこれをもって退団したことです。演出家が交代してしまうと、同じテイストでの3演目は不可能でしょう。名古屋から車を飛ばした刈馬カオス氏は「こういう作品にこそ、涙を流す価値がある」*4 、関秀人氏は「演劇でしかありえない時間が流れていた」、丸井重樹氏は「エンターテイメントを標榜している全ての劇団の人は、この芝居を見るべきだ」*5 と綴り、同業者に厳しいはずの演劇人たちが賞賛を惜しまないことが作品の出来を物語っています。
そとばこまちは関西で自他共に認める「役者集団」ですが、これだけ座長が交代しても存続してこれたのは、強力な座付作家と演出を務められるベテラン俳優たちを抱えていたからでしょう。その多くを失った5代目座長の小原氏は本当に苦しかったはずで、ようやく真の新生そとばこまちが確立したかと思われた『丈夫な教室』を最後にしてしまうのは、非常に残念に思います。「役者集団」という言葉の響きはいいかも知れませんが、当然ながら「演出家あっての役者集団」です。カンパニーとはなにかを考えたとき、代を重ねる以外の選択肢もあるのではないかと思います。
そとばこまち
今日もDVDを観た。素晴らしすぎて感動。明日も早いのに興奮して眠れない。…