この記事は2004年7月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



足場の悪い劇場。

カテゴリー: 京都下鴨通信 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 杉山準 です。

Pocket

 アトリエ劇研は京都市の北に位置する、小さな劇場です。最寄りの地下鉄の駅からは徒歩15分。
市の中心部から公共交通機関を使って40分~50分かかってしまいます。周りは閑静な住宅地で、近くに繁華街もありません。決して足場が良いとは言えませんが、それでも客さんは市内はもとより、市外、府外など遠くからも足を運んでくださいます。

 先日、東京の「青年団プロジェクト」の公演が行われました。大阪の小劇場、ウイングフィールドでの公演の後、日をおかず京都アトリエ劇研での上演というスケジュール。同じ演目を同じ日数、ステージ数上演する日程でした。私は足場の良い大阪にお客さんが行ってしまって、京都はガラガラじゃないかと内心心配していました。しかしふたを開けてみれば、京都公演の方が若干多いくらいで全く遜色なくお客さんが入り、胸をなで下ろしました。作品に力があればお客さんは来てくれるものだと改めて感じました。
 アトリエ劇研は劇場前の道を歩いているお客さんが、ふらっと訪れる劇場ではありません。演劇やダンスを見たい人がわざわざ来てくださる劇場です。そんなお客様のアンテナにぴぴっと来る作品を上演することが、この劇場をにぎわせるただ一つの方法だとおもっています。ここで上演する劇団さんにとっては、ここまで足を運びたくなる魅力を持った作品や、そう思わせる企画の魅力や宣伝、打ち出しの方法が求められているのだと思います。ちょっとエネルギーを要求されますが、それを引き受けることが劇場や劇団、ダンスカンパニーの実力を養うことだと思っています。
 「足場の悪さに関係なく劇場をにぎわしてやろう」という心意気を、ここを使う作り手から感じる時があります。そんな作り手はたいてい成長して成功を収めてゆきます。うなずける事実です。