掲示板などに無差別に募集告知を書き込む行為については、以前「近松賞募集のマルチポストに思う」で尼崎市ちかまつ・文化振興課について書いた。ネットでの告知については、手軽で費用もかからない反面、やり方を間違えると相手の心象を損ない、告知内容そのもののイメージダウンになってしまう。それだけに担当者のリテラシーが問われるところだが、最近びっくりする事例を見た。
京都芸術センターが中心となり、2004年から続いてきた「演劇計画」を受け継いで「京都国際舞台芸術祭2010」を10月28日から初開催するが、8月25日の記者発表にブロガー10名を同席させることになり、その募集告知を舞台芸術関連のブログに掲載(転載)してもらえないかという呼び掛けをしている。
メールをブログの主宰者に送って依頼するのが通常のパターンで、それならわかるのだが、メールアドレスが不明だったり、掲示板を併設していると、その依頼文をブログのコメント欄や掲示板に直接書き込んでいるのだ。メールで送るべき依頼文が、差出人自身によってコメント欄や掲示板に書き込まれた状態になり、読者から見ると異様である。掲載に応じている寛容なブログ主宰者もいるが、コメント欄にこのような依頼文を書くこと自体がおかしいという感覚がないのだろうか。
依頼文自体も「××様のブログを拝見し、○○にご興味がおありだということで、ご案内差し上げました」という文書の使い回しになっており、舞台芸術を業にしているような人にも同じ文面で送られている。○○の部分は舞台芸術、演劇、能などを使い分けているが、どう見てもマルチポストである。東京のブロガーにも送られているので、検索エンジンでキーワードにヒットしたブログに、機械的にコピペで送っているのだろう。
こうした行為は告知どころか演劇祭自体の心象を悪くし、逆効果以外の何物でもない。すでに掲載すべき情報系サイトには一通り掲載されており、なぜ個人サイトにこんなマルチポストを仕掛ける必要があるのか。応募者が少なくてあせっていたとしても、絶対に避けるべきだろう。これは失うもののほうが大きいと思う。
差出人は事務局のインターンになっているが、広報というセクションは組織の対外的な顔であり、社会人としての知見が最も問われる役割だと思う。ネットは書いたら終わりである。単純作業だからといって、インターンにこうした仕事を任せることの怖さを事務局は自覚すべきだと思う。