この記事は2010年5月に掲載されたものです。
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視野を広く、もっと広く

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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劇場法(仮称)のことを考えていると、調べなければいけないことがどんどん増える。幅広い議論をするためには、舞台芸術だけでなく、その周辺のことも知らなければならない。演劇人はもっともっと勉強すべきだと思う。

例えば、「図書館法や博物館法があるのに、なぜ劇場に関する法律がないのか」と言われると、演劇人は「そりゃそうだ、劇場法(仮称)をつくろうぜ」となってしまいがちだが、その前に少し立ち止まって、現在の博物館法についてどんな議論がなされているかを調べてほしい。

博物館には登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設の3種類が存在し、全体の8割を占める博物館類似施設には学芸員の設置義務がない。博物館法に縛られない施設だからこそ、資格のない人を採用出来るし、規制のない活動が出来るという声や、そもそも学芸員資格が粗製濫造で雇用の実態と乖離しすぎているとの指摘もある。博物館法は08年に一部改正されたが、抜本的問題の多くは先送りとなっている。こうした先例も分析した上で、よりよい劇場法(仮称)を考える議論に活かしてほしい。

劇場法(仮称)と図書館法・博物館法の関係では、小暮宣雄氏(京都橘大学教授)の個人ブログが興味深い。

問題は、階層化されることなのですね。
創造型と鑑賞型は、対等であり、両者の幸せな出会いがアーツマネジメントなので、どちらか一方が優越したり優先されるという構図が一番困る。
自由に創作すると同じように自由に鑑賞する市民形成のことをどう扱っているのかが、博物館法にはない。美術資料を教えてあげる社会教育にどうしてもなってしまう。

他方、図書館法はそれが違う。つまり、図書を選ぶ市民=読書する鑑賞者的享受者が主役になっている。
劇場法は、博物館法みたいな学芸員制度とか文科省の細かい制度しばりばかりでちっとも面白くない制度化になることをその喜びにするのか、それとも、博物館法のなかの美術館を救出して、芸術拠点機構法のようなものぐらいには、知恵を働かすおつもりなのか?そのあたりも議論の余地があります。

美術館で上演される舞台芸術や演劇的要素を用いたインスタレーションも増えている状況を考えると、芸術拠点機構法という発想はあっていいと思う。演劇人は博物館法を金科玉条のように思ってはいけないのだ。

観客を主役にすることもポイントだと思う。劇場法(仮称)もここをきちんと明文化しないと、演劇人の権益のための法律と誤解される恐れがあるだろう。