鴻上尚史氏初の小説ということで読みました。世代的にこういう話を書きたかったことはよく理解出来ますし、現実の動きとリンクさせたノンフィクション風の構成も、明らかに創作とわかる終盤を除けばおもしろいのですが、その意味で帯の「これは“小説”です」は興醒めに感じます。『すばる』連載時はもっとぼかしていたのかも知れませんが、だったら単行本でもその設定を貫いてほしかったと思います。
フィクションなのは読み進めればわかることで、これでは観る前から『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がつくりものだと紹介するようなもの。現実と創作の境界線を楽しみながら、作者の心中を推し量るのがこの本の醍醐味だと思うのですが……。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』って、公式サイトがまだ残ってるんですね。もしこの映画の宣伝手法を知らない制作者がいたら、研究しておいたほうがいいでしょう。22,000ドルの低予算で2億4,050万ドル(10,931倍)のチケット売上を記録したとして、ギネスブックに認定されています。
だまされたと言えば、私が中学生のころ、本物の殺人を撮ったという『スナッフ』が話題になりました。いまならネットで真偽を確かめられますが、当時は噂が噂を呼び、本当に恐ろしかったのを覚えています。