4月末発行予定のAICT(国際演劇評論家協会)日本センター『シアターアーツ』(晩成書房)63号に掲載される「2018AICT会員アンケート」に参加させていただいた。
日本劇団協議会機関誌『join』90号特集「私が選ぶベストワン2018」と重複する部分もあるが、このアンケートならではの項目もあり、考えるのが楽しい。
■ベスト舞台(5作品まで、順位あり)
(1) ナイロン100℃『百年の秘密』(作・演出=ケラリーノ・サンドロヴィッチ)
(2) 燐光群『九月、東京の路上で』(原作=加藤直樹、作・演出=坂手洋二)
(3) ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ワンスモア』(作・演出=上田誠)
(4) DULL-COLORED POP『1961年:夜に昇る太陽』(作・演出=谷賢一)
(5) 青年団リンク ホエイ『郷愁の丘ロマントピア』(作・演出=山田百次)
■ベストアーティスト(3名まで)
○ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家・演出家/ナイロン100℃、KERA・MAP)
○山田百次(劇作家・演出家・俳優/ホエイ、劇団野の上)
○犬山イヌコ(俳優/ナイロン100℃)
■実験的・先駆的作品
ウンゲツィーファ『転職生』(作・演出=本橋龍)
■実験的・先駆的作品アーティスト
谷賢一(劇作家・演出家/DULL-COLORED POP)
■優秀新人アーティスト
藤原佳奈(劇作家・演出家/mizhen)
■コメント
『百年の秘密』が圧倒的なクオリティの高さを見せつけた。次元の異なる完成度で、文句なしのベストワンだと思う。優れた再演がもっと増えるべきで、新作至上主義の日本に再演文化を定着させるため、各演劇賞は「再演賞」(Best Revival)を創設してほしい。
演出では『九月、東京の路上で』。原作の舞台を旅するメタ演劇にすることで、輪読が長台詞に活かされ、ドキュメンタリー演劇の単調さ、高齢化劇団の課題をも克服した。燐光群全作品でベスト3に入る。
新しい才能との出会いは本橋龍。会場の狭さを逆手に取った多重空間的(アンビエント的)演出が発明のレベルに達している。客席ギリギリまで大道具が迫り、あり得ない位置に装置が建て込まれ、視覚を超えてシーンが立ち上がり、交錯する。まさに人生の縮図。神の目線で俯瞰しているかのよう。広い会場で通用するかはこれからだが、現代口語演劇の本流を行く継承者としても注目したい。
■年間の観劇本数
約90本
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優秀新人アーティストを本橋龍氏と藤原佳奈氏のどちらにするか迷ったが、「活躍が目立った」という定義に従い、より多くの観客を獲得した藤原氏とした。クラウドファンディングを成立させるなど、作品世界への支持が広がっている。実験的・先駆的という点では、本橋氏が頭抜けていたと思う。なお、新人の定義はアンケートによってバラバラで、本アンケートでも各人の判断に委ねられている。
(参考)
『シアターアーツ』「2016AICT会員アンケート」、私のベスト5は『ロクな死にかた』『演劇』『治天ノ君』『来てけつかるべき新世界』『ニッポン・サポート・センター』
『シアターアーツ』「2017AICT会員アンケート」、私のベスト5は『ちょっと、まってください』『人間の条件』『Lullaby』『心中天の網島―2017リクリエーション版―』『アンネの日』