本番10日前の作・演出の急逝を伏せて、笑い満載のバカ芝居を追加公演まで出してやり遂げた集団というのを、私はほかに知りません。関係者の心中を察するに余りあります。
サモ・アリナンズというのは非常に特異な集団です。小松和重座長を意図的にアドリブで笑わせることに生きがいを感じるテクニシャンたちの競演で、こんなスタイルの集団は唯一無二だと思います。NODA・MAPで遊眠社時代の段田安則氏を彷彿させる名演を見せた小松氏を、観客も一緒になって壊して楽しんでしまう――絶対の実力があるからこそ許される遊びがそこにはありました。その絶妙な世界を司っていた倉森氏の才能が、こんなにも早く失われようとは本当に残念です。
遊気舎とサモ・アリナンズは東京の本拠地が同じ駅前劇場ということで、早い段階から交流がありました。バカ劇団同士ということで、惹かれるものがあったのでしょう。客演だけでなく、最後はスライムピープルというサモアリ側事務所製作のプロデュース公演にまで発展していきました。キャストだけでなくスタッフも東阪混成の稀有な編成でした。倉森氏だからこそ実現した企画だと思います。
常に笑いを生み出していく作業は、非常に苦しいものだと思います。そんな姿を一切見せず、自然体で歩んできたサモ・アリナンズの作・演出に改めて敬意を表します。波乱万丈の歴史をこんなに茶化して書ける集団は、ほかにないでしょう。年齢と共に渋みが増して、さらに魅力的な存在になるはずでした。
倉森さん、ほかでは決して観られない世界で私たちを楽しませてくれてありがとう。
ご冥福を心よりお祈りいたします。
哀悼、倉森勝利
公式サイトや拙サイトで既報の通り、 サモ・アリナンズの作・演出家である倉森勝利氏…