この記事は2006年12月に掲載されたものです。
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ネーミングライツは商業主義か

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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「演劇千年計画」が渋谷公会堂の渋谷C.C.Lemonホールへの名称変更を理由に、予定していた設立総会を延期した件ですが、もう少し私の考えを書いておきたいと思います。

主催者には会場選択の自由がありますから、会場の名前が気に入らなくて変えるのは構いません。けれど、ネーミングライツを「商業主義的性格の強い」と決めつけられると疑問を感じます。宣伝目的でやっているのですから、そこにはビジネスの論理があるでしょう。しかし、それってそんなに否定すべきことでしょうか。

私自身、劇場から相談されてネーミングライツの導入を勧めたこともあります。劇場側にとって有効なファンドレイジングの手段だと考えているからです。公共ホールの場合、これにより行政による税金投入が削減出来る効果もあります。

実行委員の中でも「侃々諤々、喧々囂々、議論百出」と書かれていますので、たぶん私と同じ意見も出ているのではないかと想像しますが、私が感じていることは下記の2点です。

●ネーミングライツは商業主義と否定されるべきものなのか。企業が企業名・商品名を付けたホールを運営することと、他者が運営するホールにネーミングライツで資金提供することは、どちらも同じ芸術文化への支援ではないのか。前者が企業メセナとして評価されているのなら、後者も評価されるべきではないのか。

●演劇の裾野を広げる事業が商業主義から一線を画したいのは理解するが、どんな芸術にも目標としてプロフェッショナルの世界があり、演劇の場合はそれが興行と表裏一体の関係にある。興行を継続するには商業主義も必要な考えであり、全否定すべきものではない。重要なのは芸術面とのバランスである。

渋谷公会堂という名前に思い入れや憧れがあった人には不評だと思います。ただ、すでにサントリーホールはあるわけですし、若者の街にふさわしくアルコールを避けて清涼飲料にしたのも一つの見識だと私は思います。ネーミングライツで商品名を付けた公共ホールは、ほかにもiichiko総合文化センター(大分県立総合文化センター、三和酒類)、宝山ホール(鹿児島県文化センター、西酒造)があり、いずれも地域に受け入れられているようです。