この記事は2006年9月に掲載されたものです。
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もう一回やります

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)の自主事業「りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ」第四弾『オセロー』東京公演を拝見しました(企画書)。

シェイクスピア作品を新潟の俳優+ゲストの座組みにより、りゅーとぴあ能楽堂と各地の能楽堂で上演するもので、クオリティの高さで評判を集めています。シェイクスピア作品はどんなアレンジも可能だと思いますが、意図的に能の制約を適用することで、逆に時代を超越した普遍性を際立たせることに成功していると感じます。

今回はほぼノーカットの上演ということで、15分間の休憩を挟んで3時間15分。会場で案内を見たときはどうなることかと思いましたが、終わってみれば短く感じました。小劇場系でも能を意識した演出にときどき出会い、中には違和感を覚える場合もありましたが、このシェイクスピアは自然体で鑑賞することが出来ました。

私が拝見したのは8月29日ソワレでしたが、ここで非常にめずらしいシーンがありました。この作品は実質的な主役であるイアゴー役を演じた植本潤氏(花組芝居)の圧倒的な長台詞で成立していますが、冒頭の数分間で数回噛んだところで、植本氏自身が突然「もう一回やります」と宣言し、相手役に手で促し、本当に芝居の頭からやり直したのです。あまりに堂々としていたので、私は演出の一部かと思いましたが(観客の多くもそう思ったのでは)、本人の判断だったようです。エンタテインメント系の作品で俳優が観客の笑いをとりながらやり直したり、トラブルで演出家がやり直した例は知っていますが、こういうシリアスな作品で俳優の意思でやり直したのは、私は初めて目撃しました。

花組芝居サイトの掲示板によると、新潟公演3日目(8/25)にやり直しが3回があったそうです。共演者は驚いたでしょうねえ……。

同じ回をご覧になった観客の方のリポートもご参考に。

かのこの劇場メモ~半券の余白
「りゅーとぴあ能楽堂 シェイクスピアシリーズ『オセロー』」を観る

ヤマトタケルの夢―市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第四弾「オセロー」東京公演2

なにげないもの
りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第四弾「オセロー」

楽日(8/31)マチネでは上演中にやや強い地震があり、「観劇とか旅行とか by kaoru」によると客席から悲鳴も上がったそうですが、俳優たちは一切動じなかったそうです。