コメントやトラックバックいただいている以外にも、このアーティクルには反応があります。「役者の裏街道」は現実にチケットノルマを抱えている役者の方の率直な感想として、心情的にはたいへん理解出来るのですが、ここは原点に立ち返り、そもそもノルマとはという話をしたいと思います。
私が制作者を務めていた遊気舎という集団は、旗揚げ時からノルマが存在しませんでした。初代座長が「ノルマがあるくらいなら芝居なんかしなくていい」という考えの人で、劇団員たちもその思想を受け継ぎ、旅公演の旅費だけは自己負担しましたが、ノルマや公演負担金の類は一切課しませんでした。私が遊気舎に入ったのは作品世界に魅力を感じたことが第一ですが、ノルマがないことにも意気を感じたのです。
ノルマがないとチケットを売らないかというと、決してそうではなく、みんな手売りはがんばるのです。もちろん枚数には個人差がありますが、合計ではノルマを課したのと同じくらいの成果を挙げていました。手売りの原動力となる「一人でも多くの方に観ていただきたい」という気持ちは、ノルマがあろうとなかろうと同じではないでしょうか。
ノルマがないと収入が不安定になりますから、制作側も日々予算案とにらめっこしながら電卓を叩きます。手売りをもっとがんばってほしいと思ったら、稽古場で具体的な数字を報告し、危機意識を役者と共有します。あと何枚売れたら支払いの峠を越えられるかも伝えます。こうして公演を成立させてきた経験から言いますと、思い切ってチケットノルマを撤廃したほうがカンパニーは成長します。最初からノルマをベースに予算を組んでいると、制作面でも団体の結束の面でも壁を越えられないのではないでしょうか。
手売りに関しては、私はもう一つ重要なことを役者に伝えました。それはチケット代を公演前に回収してほしいということです。カンパニーにとって手売りがなぜ重要かと言うと、現金収入を得て公演前の支払いに充てるためで、公演当日に払っていただくのは、制作的には手売りのありがたみが薄れるわけです。同じ理由で、もしノルマを課すのなら、そのチケット代は公演前に回収すべきなのです。事前にチケット代を回収すれば、受付が「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」と尋ねる必要もありません。
仕事と稽古で忙しく、お客様に会う時間がないという反論はあると思います。だったらチケットは郵送し、銀行振込でお支払いいただきます。振込手数料はかかりますが、プレイガイドの販売手数料と同じくらいですから、その分だけチケット代を安くし、制作者もそれを認めればいい。郵便振替なら1万円まで手数料70円(機械60円)です。要は事前入金していただき、チケットを先に届けることが重要なのです。カンパニーが成長するにつれ、受付の混雑をいかに抑えるかが課題になりますが、その第一歩になると思います。
身内客が創生期のカンパニーにとって恩人なのは、私も「身内客から一般客へ移行するためのロードマップ」に明記しており、軽視しているつもりは全くありません。役者の方が手売りを努力する行為も尊いものだと思います。そのことと一般客への接遇マナーを両立させながら成長していくのは決して不可能ではなく、「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」をやめるのはそのスタートラインだと思います。
どうしても「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」をやめられないのなら、チケット代を前売・当日同一料金にすべきでしょう。これなら身内客でも料金差が発生しないので、一般客も不公平感を覚えません。「お知り合いはいませんか」も単なるアンケートだと解釈可能です。要は観客の面前ではっきりわかる待遇差をしないことが重要で、先にクーポン券(当日精算券)を渡しておくとか、納得出来る仕組みをつくっておけばそれでいいのです。スーパーのレジでクーポン券を使っている人に「不公平だ」と怒る人はいませんが、レジ係が知人だからという理由で割り引いたら怒りますよね。それと同じです。
はじめまして
「役者の裏街道」の柿森ななこです
取り上げていただけるなんて、光栄です
大変に勉強になりました
確かにノルマであろうがなかろうが
手売りはしますね。
ノルマをあてにされてるのではなく、
事前にチケット代金を回収されたいのですね…
本当にすみません、、浅はかでした
自らお客様を呼ぶ側として、
自分の立場から思うままに意見を言ってしまいましたが
「観客の面前ではっきりわかる待遇差をしない」
ということがこの運動の目的と理解しました
言われてみれば当たり前のことですよね。
ごめんなさい
スーパーのレジのクーポンの例え話は目から鱗で
なるほどなーと納得しました
少しでも、この運動が広がるように
微力ながらも声をだして行こうと思います
ありがとうございました!
前売り券のススメ
オペラ『椿姫』のチケット購入。公演日前日であります。
舞台稽古まで見せてもらっちゃって事前リサーチは完璧のはずなのにいざ観劇チケット購入となるとかなり往生際の悪い私。チケット代の高さは初心者には確かにハードルであります。
電話予約扱いにしてもらおうかと…
芸術ノルマ、現実ノルマ。
トンボ玉が眠る。
ノルマっていう言葉がある。普通は営業とかでよく使われる。
しかし、これは音楽や芝居でもよく聞く言葉である。
要するに、最低○人のお客を呼べ、呼べなかったお金を払え、ということである。
昔、ネットがなかった時代は、あたしはライブハウス.