例年12月下旬の岸田國士戯曲賞最終候補作品発表が、今回は越年となった。「候補作が上演台本中心となったいま、白水社は岸田戯曲賞の推薦・選考時期をずらすべきではないか」という声が届いたのだとしたら、うれしい。
1月~12月を対象とした賞の候補作が年内に発表されること自体がおかしかったわけで、公演前の活字化を前提とした選考スケジュールは、これを機に抜本的に改められるべきだと思う。
雑誌・単行本での発表を前提とした規定も改定すべき時代だろう。これは活字化された戯曲を特権化し、活字になりにくい若手や地域在住の劇作家の敷居を上げることにほかならない。一般公募をしないことが、岸田戯曲賞を岸田戯曲賞たらしめているのだとは思うが、地域在住の劇作家は他の戯曲賞を取らない限り候補にすらなれない時代があった。いまも存在すら知られず、地域で埋もれていく傑作があるのではないか。新しい才能の発掘が賞の使命なら、その妨げになる条件は出来るだけ取り除くべきである。
活字化という観点では、戯曲が掲載出来る雑誌の復刊が先決というご意見もあったが、ネットへのシフトが進む環境で雑誌媒体の維持は非常に難しいだろう。それよりも、本当に優れた戯曲を書籍の形で残し、それを末永く売り続けていくほうが演劇文化への貢献ではないかと私は思う。