この記事は2005年6月に掲載されたものです。
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ガレリアホールでポかリン記憶舎の至福

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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ポかリン記憶舎『短い声で』が、東京・五反田のガレリアホールで上演中です。本日マチネを拝見しましたが、なかなか観応えのある作品で、わずか3日間で終わってしまうのは惜しいと思い、こちらに書きます。明日6/6(月)が千秋楽ですが、平日マチネと合わせて2ステージあります(14:30/19:00)。ポかリン@ガレリアという組み合わせの妙は、そうあることではありません。珍しいキノコ舞踊団@原美術館中庭のようなものでしょう、これは。

この作品は6/11(土)~6/12(日)に「演劇祭KOCHI2005」参加作品として高知県立美術館ホールでも上演されるのですが、それは単なる買取公演で、ガレリアはポかリン記憶舎の手打ちだと思っていたら、クレジットを見ると東京公演も高知県立美術館との共催のようです。高知県文化財団による東京での作品発信なわけで、もっとアピールしてもいいくらいです。

物語の舞台は、若手新進造形作家の個展が開催される美術館。その初日前夜から最終日までを、作家のオブジェが置かれた展示室で描きます。実際の美術館内で、美術館を舞台にした作品が上演されたケースはいくつかありますが、その東京会場にガレリアを選択したセンスに唸ります。ここはホールと名前が付いていますが、インテリアのショールームが集まる東京デザインセンター地下にあり、美大の卒展やデザイン関係の展示会によく使われます。ガレリアで演劇をやると、広大な空間に芝居が負けてしまう場合もあるのですが、展示室という設定なら全く違和感なく、美術館で懸念される残響の心配もありません。美術館が舞台ならガレリアでという発想が、本当に素晴らしいと思います。

ポかリン記憶舎の場合、抽象的なイメージのパフォーマンス作品もありますが、これは台詞できっちり物語を紡いでいくもので、演劇初心者にもオススメです。会場のリアルさがエッジの利いた展開に説得力を持たせ、独特の浮遊感を観客の内面から芽生えさせていきます。観客が共に展示室にいて、出演者と共にオブジェを鑑賞している効果が大きいと思います。惜しいのは、終盤に登場人物が増えてエピソードがやや性急な感があること。もう少し上演時間をかけてもよかったのではと思いました。

出演者は豪華客演陣が見もので、カンパニーメンバーも健闘しています。三村聡氏山の手事情社『銀河鉄道の夜』よりこちらを選んだことになるわけですが、それだけの価値がある出演だと思いました。展示のための照明という設定で、活躍が著しい木藤歩氏(balance,inc.)の照明ショータイムがあるのも魅力です。終演後もガレリア内のバーカウンターでカクテル販売をするなど、ガレリア利用のお手本のような公演でした。五反田駅前の交通至便の場所ですので、ご覧になって損はないと思います。

高知公演も、ぜひ近隣の方に足を運んでいただきたいものです。エンドステージが一般的な美術館ホールで、いかにガレリアのような一体感を醸し出すか、スタッフワークも注目されると思います。


ガレリアホールでポかリン記憶舎の至福」への2件のフィードバック

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    ポかリン記憶舎『短い声で』06/04-6東京デザインセンター・ガレリアホール

    短い声で

     東京デザインセンターのガレリアホールというと、ク・ナウカの『サロ…

  2. デジログからあなろぐ

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    五反田にある東京デザインセンターガレリアホールにてポかリン記憶舎の第12回公演「短い声で」を鑑賞・・・本日、昼間公演は、終演後にアフタートークがあるということで、どうせ観るならついでに・・・という気持ちで馳せ参じる。 高知県立美術館との共催という形をと…

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