NHKの福岡ローカルで「ゆうどきワイド福岡」という番組があります。
この中のコーナーに、2003年の春から「時々」異空間を醸し出すバンドが出演しているのです。
その名は「だるだる」。
【リバーウォークのイルミネーションを背景に歌う「だるだる」】
出演しているのは「北九州大辞典」というコーナー。
隔週のコーナーですが、国会や大相撲のため「めったに見られない」レアな存在です。
しかし先日のクリスマスイブには「だるだる」だけの特集で11分のオンエアという快挙(暴挙?)を敢行。ちょっと驚きました。
「だるだる」は、タツポン・ツヨポンとリーダーのよしきの3人編成のバンド。ただし「よしき」は犬の人形です。
彼らは北九州の劇団「飛ぶ劇場」のメンバー、泊達夫と寺田剛。ちなみによしきも飛ぶ劇場出演歴、長いです。
歌は基本的に北九州の名所名産がネタ。タイトルだけ並べても、その様子が分かるでしょう。
「川歩き」
「BANANA(バナナの叩き売り)」
「パンチパーマブルース」
「海峡劇的船(ドラマシップ)」
「九州鉄道記念館」
「君とぐりんぐりん」
「戸畑祇園の夏が来た」
「たけのこジェネレーション(合馬の筍)」
「いとうづの森へ行こう」
「小倉城恋唄」
「レッツ平尾台」
「ぐりんぐりん」はグリーンパーク、「川歩き」はリバーウォークを歌ったものです。
元々、NHK北九州放送局から企画が持ち込まれ結成した「劇団内バンド」でしたが、活動の域はどんどん広がっているし、メンバー達もやる気満々の模様。
地元の名物を歌う、というとダサダサなイメージを抱くかもしれませんが、メロディーは愛に溢れ、(曲間のコントはペーソスに溢れ?)「地元にこんなに歌う場所があるのだなぁ」ということが素直にうれしく感じられてきます。
NHK北九州スタッフの「演劇人」への期待は高く、この他にも「北九州弁講座」というコーナーで地元の小劇場系役者を採用。
民間の放送局に時々ある、「出してやるよ、うれしいでしょ?(ギャラが無くてもみんな出たいでしょ?)」な驕った雰囲気は全く無く、どんなに「無名」でもアーティストとして遇するその姿勢に尊敬の念を感じます。
このような関係が、アーティスト側にも「しっかりやらねば!」という意識を生んでいると思います。
「俺らの地元には何もない」という思いが強かった時代を経て、地元への愛着が芽吹き、また「何もなくても自分らで作る」くらいの意気込みが感じられるようになった北九州。
最近、山口県出身の友達が、山口情報芸術センターのopenを聞いて「・・・帰ろっかなぁ」とつぶやきました。
人が住みたい街って、やっぱりアートが必要なんだな、としみじみ。
「だるだる」自体が北九州の「観光力」になるべく、頑張って欲しいと思います。
他所でも書いたのですが、この「だるだる」のパワーには圧倒されました。
何年か前テレビ局関係の方から、地方局はいずれその役割を終えるという話を聞いたときに、
「結局文化というものも中央集権なのかしら」
と、やるせない気分になったものでしたが、まだまだ行けるぜと楽しみになりました。
活発に活動しているとはいえ、小屋での芝居はまだサブカルチュア的要素が濃いと感じているので、
テレビが担う役割は大きいと思います。居ながらにして情報を取りこめるという点で。
最近TVっ子(今更アンタこの歳で)なのですが、何だか演劇人をよく見かけるようになりました。
昔からですか?私が知らないだけで。
そしてそれがとてもウケている。彼らがテレビに出る事で、
芝居を観に行こうという人は増えるんじゃないかと思います。
そしてそれらは主にキー局が作ったものでした。
地方局は、そのオリジナル番組の殆どがキー局の焼き直しのように感じます。
アイドル局アナだったり、かなり古くなりますが「ねるとんみたいなの」をやったり。
バラエティーでお笑いの人が騒いでいる様を地方ではそのままレポーターにやらせたり。
「中央ではそれで数字が取れているから」
という理由だけのような気がしてなりません。
地元の情報発信が地方局のオリジナル番組の柱ですから、それを取り込みつつ新しいものを
造り出していくのは難しいかもしれませんが、同じようなものを素人臭いカバーで
見なければならないこちら側としては、もう少し捻ってくれよと思うのです。
それに加えて、同じようなものがウケるという強迫観念のために壊されていくその人の持ち味。
ある人が地方局のリポーターになったのですが、その人がかなり面白い人だと知っているだけに
ただ騒がしいいじられ役としてしか機能させないその番組を、私は悲しくて見られません。
「だるだる」も、地方のテレビであるという事で期待はしていなかったのですが、
ダサダサなイメージを敢えて狙ったような、それでいてブラックな感じがとにかく新鮮でした。
「何で夕方のNHKでこんなのやってんの?これ普通にキー局の深夜帯でやれるやん」
「てっぺんとれるぜこいつら」
と、別に自分が企画している訳でもないのに妙に興奮しました。
「だるだる」や「北九州弁講座」を見て、芝居を観に行こうと思う人も増えると思います。
テレビ局的にも、面白いものが作れるというのは視聴率にも繋がりますし、いい共存関係だと思います。
テレビは子どもから大人まで、一番簡単に触れる事の出来る情報発信ツールなだけに、
もう少し視聴率より質の方に目を向けてもらいたいものです。
質が上がれば自ずと数字にも出るし、情報媒体として周りにもいい影響を及ぼすと思います。
「だるだる」はそのいい例だと思いました。
アートはちゃんと地方分権出来る、ここで私も活動していけるという自信にも繋がっています。
現在、北九州にある製作可動しているTV局はNHKのみですから、色々仕掛けていって欲しいと思います。
個人的にNHKと言えば大阪放送局が2001年に作った
『料理少年Kタロー』
http://www.nhk.or.jp/ainouta/
が好きで、こんな風に地元に役者の層が厚くなれば、局だってオモロイことができる!
つまり相乗効果だと思ってます。
ちなみに上のサイトの「脚本家プロフィール」のコメント(当時NHK大阪放送局ディレクター・大橋 守氏)は人間味溢れる語り口で読ませます。
大橋氏はNHKエンタープライズ21にうつられたようですが、『浪花少年探偵団』の演出もされていて、その作品では1回、土田英生氏の演出もありました。
九州も、地元パワーでドラマが作れるようになりたいものですね。