この記事は2007年12月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



責任感と理念

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

広島の制作者・岩﨑きえ氏のブログ「まど。」が指摘した「善意の人」。ギャランティの有無に関係なく、制作者にいちばん大切なのは責任感であり、その重要性を伝えるのが人材育成の難しさだろうと思います。

もう一つ、ここでは「意識のなさ」「仕事の意味」という言葉で書かれていますが、それは「理念」が必要ということではないかと感じます。責任だけで説明しにくいことも、カンパニーや企画の理念と併せて考えることで、かなり納得の行く説明が出来ると思います。岩﨑氏が書かれた具体例も、携わる人々が理念を共有せず、個々の作業レベルでしか見ていないことに起因しているのではないでしょうか。

理念を共有していれば、それを実現するためにどんな行動が必要かわかるはずですし、わからなけばマニュアルに落とし込むことも可能です。カンパニーの中には、毎回お手伝いさん全員にきちんとレクチャーしているところもあり、広島でも出来るはずです。手伝いたいという意欲は貴重だと思いますので、その芽を摘まずに育てる努力を期待しています。

制作者やお手伝いさんの不足はよく耳にしますが、それは小劇場界自身が実演家中心の行動原理に陥り、人材を重視してこなかったことによる自業自得です。演劇は興行と表裏一体であり、実演家だけで公演は出来ません。本当に制作者やお手伝いさんがいないのなら、私は公演をしないという選択肢があっていいと思います。舞台優先、実演家の思い優先の公演に私は疑問を感じます。

責任感や理念の共有が出来たら、あとは実践的な指示です。制作者の行動にはすべて理由があります。お手伝いさんにその理由を教えれば、応用力が増して臨機応変に振る舞えるようになります。そのためには「制作のうんちく」はとても有効です。物事の成り立ちや背景を説明することで、知識を経験に近づけることが出来ます。

弁当を手配するときは、「2種類頼んで」と指示するだけでなく、なぜ2種類頼むのか理由を説明します。苦手なものがあった場合、1種類だと食事が出来なくなってしまいます。理由を知っていれば、2種類の食材は出来るだけ違うものにしようと心掛けるでしょう。から揚げ弁当とチキン南蛮弁当を頼むようなことはしないはずです。

シンプルな例を書きましたが、すべてこうしたことの積み重ねだと思います。ここから責任感や理念を自覚させることも出来ます。弁当が食べられなくて公演に支障が出たり、現場の雰囲気が気まずくなったら、誰だってイヤでしょう。お手伝いさんの行動一つが公演の成否を担っている、それぐらいの気持ちを抱いてもらうべきだと思います。