地震のときは川崎駅前のチネチッタで『姑獲鳥の夏』を観ていました。
毛皮族・江本純子氏演じる「包丁女」が久遠寺医院の門を揺さぶるシーンで椅子が振動しだしたので、最初はサラウンド効果かと思っていたら、大きな揺れが来ました。#10さんも川崎駅前で食事中で大した揺れではなかったそうですが、映画館の座席は仮設のようなものですから、こちらは震度5弱の実感がありました。
映画は中断なしにそのまま上映。連絡を取る人の出入りが相当ありましたが、私はそのまま映画の世界に浸り、終映後にチネチッタのエレベーターが停止しているのを見て震度を知りました。最初はJR南武線経由で帰ろうと思っていたのですが、不通とのことで京急で蒲田まで移動し、東急を乗り継いで帰ってきました。
京極夏彦氏はデビュー当時から読んでいます。映像化が難しい内容で、ファンの思い入れも強いだけに、一筋縄では行かないだろうと感じていましたが、実相寺昭雄監督という手があったかと膝を打ちました。賛否両論飛び交っていますが、私は実相寺監督で京極堂シリーズを映像化するという企画自体を評価します。批判している人は、きっと映像化そのものを拒否しているのでしょう。
キャスティングも観客それぞれの思いがあるでしょうが、私は健闘していると感じます。原作の世界に出来るだけ忠実でありたいという思いが、これだけ滲み出ている映画はめずらしいのではないでしょうか。『姑獲鳥の夏』のプレミアイベントは、あの東京国立博物館表慶館前で行なわれたそうです。これだけで、関係者のセンスの高さがわかるというものです。
私が人生で最も影響を受けた邦画は、中学2年のときに観た市川崑監督の『犬神家の一族』です。洋画中心だった私の映画観を変えた作品です。こういうエポックメイキングな作品に出会うと、参加したスタッフ・キャストは末席でも人生の誇りになるだろうとうらやましく思います。『姑獲鳥の夏』もそんな作品になる資格があると思いました。実相寺監督が現役のうちに、どんどん続編を撮っていただきたいものです。
今回の地震は幸い被害も軽微で、気を引き締めるよい警鐘になったと思います。東京に大地震がいつ来てもおかしくないことを、改めて自覚したいと思います。