ヴィレッジヴァンガード最大の魅力は、書店員による手書きPOPです。2001年の『白い犬とワルツを』ベストセラー以来、手づくりPOPによる販促が話題になりましたが、なんといっても本家本元はヴィレッジヴァンガードでしょう。
私がよく行くのは下北沢店ですが、コミック売り場に行くと思わず衝動買いしそうなPOPの数々が目に飛び込んできて、自分を制するのに苦労します。本当に苦労します。こうしたPOPを書ける書店員を育てていること自体が、ヴィレッジヴァンガードの強みでしょう。いまではPOPを書きたくて入る人も多いのだろうと想像しますが、このセンスを伝授してきたことに驚嘆します。今年は「ヴィレッジヴァンガード杯手書きPOPコンテスト」も開催され、『編集会議』で連載「どっちのPOPショー」も始まりました。
こういうPOPを書けるのなら、小説だって書けるはず。今年、第102回文學界新人賞を受賞した木村紅美氏は下北沢店の元アルバイトです。下北沢店では、受賞作や受賞第一作を掲載した『文學界』をサイン入りで並べていました。もちろん、誇らしげな現店員のPOPを添えて。
演劇も、チケットを衝動買いしたくなるコピーをもっと書けばいいのに。下北沢店コミック売り場風に煽ると、「私たちが演劇を続けてきたのは、この作品を世に問うためでした」「これを観ないで3年後に後悔している人の顔が目に浮かびます」「日常生活に潜む悪意を描かせたら、ライバルはちょっと見当たらない」とか。もちろん、中身が伴っていなければ大変なことになるでしょうが、それぐらいの自信作を観せてほしいものです。
ヴィレッジヴァンガードのPOPについては、社長の菊地敬一氏が書いたこの本を。
新風舎
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POPが特定の本へのピンスポットなら、書店という舞台を広く目一杯使いたいというのが、ジュンク堂書店の福嶋聡氏。ヴィレッジヴァンガードのような平積みとは違う、棚差し中心の書店員として『劇場としての書店』を出しています。福嶋氏は劇団神戸で演出家・俳優として活躍したハーフタイムの演劇人でもあり、その視点が活きています。