この記事は2003年12月に掲載されたものです。
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はじめての「あじび」は痛恨の制作不在。

カテゴリー: 紫川子連れ狼 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は たにせみき です。

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先日、朗読会の客席に向かって、博多リバレインを訪れました。
朗読会と言っても「詩のボクシング」福岡大会の関係者が中心になってお祭り的に開催するもので、映像有り・寸劇ありのにぎやかなもの。
翻ってリバレインにはかつてその名も「スーパーブランドシティ」(今年9月に『イニミニマニモ』に改名。英語で「どれにしようかな?」の意)と冠した高級店が立ち並ぶ場所。
自分の場違いさを少々感じながら目指す上階へ登っていきました。

会場の「あじびホール」は福岡アジア美術館の8階にある140席の小ホール。実はこの日、初めてアジア美術館に立ち入った私でした。
思ってた以上に広大で、美しく、折しも「トルコ三大文明展」が開催されており、日本初公開の「世界最大級のエメラルドをちりばめた短剣」にお客様がわんさか詰めかけていました。

さてそこで事件は起こりました。
あじびホールのドア前の広いロビーには大きなビジョンがしつらえられていて映像での解説が行われていました。
ベンチシートに座って画面を見る美術館の訪問者たちの後ろに、ホール公演が終了し、朗読会を堪能した観客が流れ出て、見送る出演者達と歓談を始めた途端・・・数名の警備員が走ってきて、
「通路をふさがないで!」「静かに!」「解散して、解散っ!」
と、厳しい声色で注意勧告し、ポールを持って来てはお客さんの真横にドンと置くのです。
上演関係者も点在していて、何が起こっているか気が付かない者が半分な模様。
私は「確かにここで立ち話してはビジョンを見ている方々にうるさいだろう」と思いましたが、喋ってもなく、ただ「出てきた」ところだったので非常に不快にも感じました。
「こっちだって客だろがおい」
こんな単純な「事件」は、打合せの段階でホールと上演団体が確認・相談しておけば起こらないことです。
団体側は「客出し(お見送り)は当たり前」と思って話を持ち出さなかったのかもしれない。しかしホール側も何時終演か把握しているのだからその時にロビーがどういう状態か、想像できないはずがない。
どちらにも「シミュレーションの出来る担当(制作)」が居れば、お客は出会い頭に「迷惑モノ」扱いされずに済んだでしょう。

また警備に関しては、上演中、裏通り(ステージへのドアは通路として開けてある)をしょっちゅう喋りながら通り、ドアの開閉音も、上演に明らかに差し障っていました。
このホールでは演劇公演が行われることも少なくないのですが、トルコ展で増員された「新参」だったのでしょうか。
ともかくせっかくの美術館で「アート」に全く理解も協力も感じられない仕打ちを感じて悲しいやらくやしいやら。

ヨウロッパの劇場では担当消防士、売店の売り子さんに到るまで「劇場の関係者」はその劇場と、劇場で上演される舞台作品に誇りと愛情を持っているのが普通だ、なーんて聞いたことがあります。
あじびホールに「劇場」を求めるのは行き過ぎとしても、そこで行われることへの関心を持って欲しいし、もちろん使用団体もそこがどういう場所か、どういう話を切り出すべきか考えて欲しい。
相互理解、そのために「制作者」が要るのだ、と、改めて思い知っちゃった「事件」でした。

福岡アジア美術館(「施設案内」参照)
http://faam.city.fukuoka.jp/faam/j/a_museum.htm
ちなみに現地付近で「あじび」と言っても通じないことが多いです。


はじめての「あじび」は痛恨の制作不在。」への2件のフィードバック

  1. 藤本 瑞樹

    先日のその朗読会で、会場受付の手伝いをしておりました。
    確かに手伝いとして当日行ってみても、「やりにくい」感じが否めなかった部分はあります。

    「トルコ展」はラスト1週間ということもあって、大盛況だったみたいですね。
    ホールのロビー周辺は音声を使った展示が多かったため、話し声が「トルコ展」来場者の迷惑になる、というのは確かにそのとおりだったのですが……。
    「通路をふさがないで!」「静かに!」「解散して、解散っ!」という大声での注意(も、どうなんでしょうね)は、ちょっとなあーと思いました。
    その注意以降、お客様がその場に残りづらい雰囲気ができあがってしまって。
    せっかく詩集やCD(非常にすばらしい作品ばかりだったのに!!)も用意していたのに、昼の公演(15~17時)では、詩集もCDも、ひとつも買っていただくことができず……。
    もしかしたらそういうものをロビーで販売していたということすら気付かずに会場を後にされたお客様もいたかもしれないと思うと、非常に残念な気持ちになりました。

    他にも、どうやら「トルコ展」>「朗読会」という構図らしい、というような、「不平等」な注意をされたこともあったりして……。

    制作者の不在によって「トルコ展」来場者にかけてしまった迷惑に関しては、明らかに朗読会側の責任でしょうけど、それでも「ホール利用団体」なのだから、あまり「トルコ展」>「朗読会」という構図を押し付けて欲しくはなかったなあ、と思いました。

  2. たにせみき

    コメントありがとうございます。
    「詩集やCD」・・・気が付きませんでした。
    (物販はレイアウトも命ですが)

    まずは使用者側が毅然とした態度で打合せを進めることが出発点だとは思いますが、
    会場側も「別の催しがあっているのでこういう点でご迷惑をおかけしますが・・」という切り出しをして欲しいものですね。
    昼公演の後については例えば6階のガーデン(階段下)でお見送り&物販をしても素敵だったかも。
    (許可や雨天や誘導の問題がありますが)(許可がおりれば夜公演の当日券も販売したり。)
    ↑あそこで「朗読会が行われている」という情報が表からは伺い知れなかったので)

    「初めて行った場所」がそうだと「あそこは表現活動には理解がないところなんだ」と思いこんでしまわれてもしょうがないです。
    それは「あじびホール」にとっても宜しくないことだと思うので、機を見てお話しをしてみたいと考えています。

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